永久なる春の追悼曲(第六話)蒼天宮への逃避行
1 もう一人の男 その男は清矢より7センチ背が高く、渦中の少年が求めるものすべてを備えていた。順和二十七年(ロンシャン歴After Katastroph 1309)八月末日、北陸新潟県月華神殿より帝都に帰還した祈月清矢を待っていたのは、祈月軍閥参謀、二十六歳の伊藤敬文元少尉だっ … ...
1 もう一人の男 その男は清矢より7センチ背が高く、渦中の少年が求めるものすべてを備えていた。順和二十七年(ロンシャン歴After Katastroph 1309)八月末日、北陸新潟県月華神殿より帝都に帰還した祈月清矢を待っていたのは、祈月軍閥参謀、二十六歳の伊藤敬文元少尉だっ … ...
5 偽装されたラブストーリー 月華神殿にたどりつくと、石膏塗りの玄関口で毛利諒が蘭堂宮朱莉と談笑していた。黒のシャツにループタイを締めた端正な立ち姿だ。濃紺のスラックスも洒落ていた。朱莉は巫女服のまま、自然に応対している。 ...
1 演出された天災 順和二十七年六月、樹津川河口の空が赤黒く染まった。 兵たちの血が空に映ったのだと、山城県の民たちは声を潜めて語り合った。 鷲津氏率いる国軍の一部による山城県への侵攻は、もはや単なる地方軍閥の討伐ではなく、日ノ本の命運を占う戦となった。 ...