First aid Panic!
1 アルカディア国、クラブ『カメレオンのための音楽』にて。ゆるくダンスミュージックがかかる暗がりの中、恋人兼親友兼相棒の清矢くんがカクテル片手に質問してきた。 「そーいや、詠(よみ)のフェチって何? 俺はね...
1 アルカディア国、クラブ『カメレオンのための音楽』にて。ゆるくダンスミュージックがかかる暗がりの中、恋人兼親友兼相棒の清矢くんがカクテル片手に質問してきた。 「そーいや、詠(よみ)のフェチって何? 俺はね...
清矢くんが草笛家のピアノ部屋で楽譜みて唸ってる。 「えっ、ここも転回和音なのか? ったく、調性どれだよ~! 全然わかんねぇ」 しばらく鉛筆片手に楽譜とにらめっこしつつ、ところどころに英字記号を書き入れる。そし...
同室の黒須イアソン先輩が風邪で熱なんか出したので、俺が寮の仕事を代わってあげることになって。五時に起きてカセラドルに集合したらそこにいたのはサボリに厳しいウィリアム・エヴァ・マリーベル。何でイアソンが...
金曜は同室の黒須イアソンが全コマ授業の日で、俺は餌付けかよって思いながらもガムとかロリポップとかジュースとか、ともかくしゅわしゅわ甘いものを用意して、あとは念のため、一応念のためにハンドクリームの残量...
クリスマス休暇が近いある日、ウィリアム・エヴァ・マリーベルは喉の痛みに悩まされていた。クリスマスは聖属性塔では当然、重大なイベントで、ウィリアムもミサに劇にと引っ張りだこであった。硬い金髪に翠の目、勇...
ウィリアム・エヴァ・マリーベルは困っていた。 なぜなら、隣で恋人の祈月夜空が寝ているからである。 ここは寝台ではなく、アルカディア魔法大学の図書館だ。天井に至るほどの高い本棚が連なり、古代の印刷物や魔術師...
第四章 46 寮へ帰り着いたのは十二時を過ぎた夜半だった。学長側の監視役から真相の代弁者となったウィリアムは闇塔に収容され、事態収拾が成るまでは聖属性塔へは返さないことになった。夜空についても同様で、塔十階...