
ムッシュ・ド・パリは迷わない(2-2)
その二 この頃はやりのおとこのこ(2) 3 煙草臭い1LDK十二畳の新築マンションに足を踏み入れた瞬間、ハルは忌憚なく評した。 「相変わらず汚いな」 「男一人ならこんなもんだろ」 毒づいたものの、ハルの刺すような視線で吾朗は黙った。リビングに抜けるまでのキッチンとユニットバス … ...
その二 この頃はやりのおとこのこ(2) 3 煙草臭い1LDK十二畳の新築マンションに足を踏み入れた瞬間、ハルは忌憚なく評した。 「相変わらず汚いな」 「男一人ならこんなもんだろ」 毒づいたものの、ハルの刺すような視線で吾朗は黙った。リビングに抜けるまでのキッチンとユニットバス … ...
その二 この頃はやりのおとこのこ 1 この世こそが地獄だ。これが、「吾郎・G・マクスウェル」の信念だった。十二まで日本で暮らしていたからこそ、無常観にも似たそんな信念を持つに至ったのかもしれない。無論、カトリックはそんな教えを説いてはいない。 ...
その一 グッバイ私の初恋 4 カイと吾朗は授業が終わるとすぐに帰って行った。普段なら軽く雑談をして二人をねぎらうのだが、今日は諍いもあった。カイも負担を強いたと反省したようで、律儀に謝罪していた。次回は小テストはないらしい。 面会締め切りも近い夕方の病室。ひばりが双子の妹、つ … ...
その一 グッバイ私の初恋 1 坂本晴樹は家から歩いて二十分の神社で剣道の自主練をしていた。深夜三時、心が妙にざわついて目が覚めた。眠りなおすことも出来なくて、兄にも父にも断らずジャージに着替えて家を抜け出した。五分ランニングの後、集中して素振りを始める。正面、跳躍、左右面。普段 … ...