お題「映画鑑賞」「暗闇」
敬文と活動映画見に来てる。たまの息抜きにどう? って誘ってきたから、俺も嬉しくなってついてった。ポップコーンやメロンソーダ買って、始まる前からワクワクしてる。 「俺、映画なんて大学生で初めて行ったよ」 「えぇー? 俺はたまにばあちゃんとか、母さんとか……あと友達とかとも一緒に来 … ...
敬文と活動映画見に来てる。たまの息抜きにどう? って誘ってきたから、俺も嬉しくなってついてった。ポップコーンやメロンソーダ買って、始まる前からワクワクしてる。 「俺、映画なんて大学生で初めて行ったよ」 「えぇー? 俺はたまにばあちゃんとか、母さんとか……あと友達とかとも一緒に来 … ...
伊藤敬文は祈月家二階の客間、自室として借り受けているそこで、主君の息子を抱擁していた。二十八歳と十八歳、十歳差。まだ高校生で、遠き魔術師の理想郷、アルカディア魔法大受験のための準備が忙しい。伊藤敬文も去年三月に国軍に士官として復帰し、夏の間だけそこに来ていた。 ...
「今夜は納涼のごちそうだ」と言って清矢様の母君が台所の棚から取り出したのが手回しのかき氷機。氷を砕くだけあって刃は厚い。清矢様の祖母が「いちいちシロップ買ってくるのも手間だから」と果実酢や梅酒を用意している。俺の主君である源蔵様の愛息である清矢様は「えーっ、氷は買って来んだから … ...
伊藤敬文(26歳)×祈月清矢(16歳) 伊藤敬文は陶春県の祈月本宅のベランダに腰かけていた。隣では、清矢がハープで家に伝わる風の契約曲「風の歌」を弾いている。豚の焼き物に蚊取り線香が焚かれ、音楽が止んだ。本日の指のレッスンは終了だ。座る少年との年齢差はちょうど九歳、二十六歳と十 … ...
俺は故郷からしたらとんだ裏切りものだった……弟の清矢たちがグランドマスターを味方につけ、堂々と手続きを踏んでアルカディア魔法大学に入学し、持ち出していた妖刀、新月刀を奪い返されてしまってから、俺は輝きをすべてなくしてしまったかのようだった。ロンシャンでの頑張りも、ボスやセバスチ … ...
その時の俺の内心は「何故」「可愛いんだが」「詠×メガネで好き×好きの無限大」「詠視力悪くなったのか?」「メガネっこサイコー!」と風雲急を告げていた。黒ぶちの角ばったオサレメガネを装備した詠は俺の方を振り返って、ニッと得意気に笑った。いかんいかんぞけしからん、世界が恋に落ちてしま … ...
大晦日、クリスマス休暇で多くの学生が寮を出ている時期だ。夜空の弟の清矢と友達の充希は居残り組を集めて風属性塔でオールナイトパーティーを開くことになっていた。夜空も誘われており、夕暮れのどこかほぐれた空気のなか、ジャケットだけ羽織ってお菓子片手にサロンへと急いだ。 ...
三月初旬、そろそろ試験だって言うんで授業も追い込みが始まったころ。トモダチの充希が俺にこっそり耳打ちしてきた。 「レダ・アチュアンの実家に行く約束したんだけど、疑われないよーに清矢くんと一緒に来てくんない?」 「どうせ荷物持ちだろ。気があるなら一緒に行ってやればいいじゃん。俺た … ...
四月になり、アルカディア魔法大も春休みに入った。雪深いヨーロッパのこの地では、春はじめのこの時期が長期休暇にあてられる。ともあれ、直前までテストだの進級だので慌ただしかったから、気候のいい時期にたっぷりと自由時間を貰えて、俺はウキウキしていた。夜空と一緒に故郷に帰ろっかとも言っ … ...
多数のベルトコンベアが置き去りになった広場を抜け、地下があることに気づいてピットまで降りてしまったのが運の尽きだった。中にいる魔物と懐中電灯の光の中で間一髪で渡り合い、退魔コンパスで安全を確認したまではよかったものの、工具でこじ開けた四角い進入口が開かなくなってしまったのだ。 ...
祈月氏の家宝を持ち逃げした夜空っていうやつのために、俺たち櫻庭詠(さくらば・よみ)と祈月清矢(きげつ・せいや)、そして望月充希(もちづき・みつき)はアルカディア魔法大に留学することになった。 地獄の受験勉強もひと段落して、今日はかの国に渡るための旅券を作成するために、証明写真 … ...
俺は夏が好き。冷え性で冬は末端が冷えるから。風属性塔のサロンでそう言ったらルームメイトの充希は反論した。 「えー、清矢くんに似合う季節って冬じゃない。夏男は俺でしょ? 海辺のアバンチュール、階段でかじるオレンジだよ」 「冷たい性格とかそういう俺への間違ったイメージじゃねぇだろう … ...
アルカディア魔法大学はクリスマス休暇だ。俺たち極東からの入学生は、たった一か月半の休み程度で日ノ本に帰るわけにはいかないから、居残り組に入っている。だけど世話になってる黒須先生とその息子さんのイアソンは帰るっていうんで、俺は堂々と恋人の詠の部屋に入り浸ることができていた。聖属性 … ...
クリスマス休暇が始まった。全寮制かつグローバル規模のアルカディア魔法大学では、一ヶ月程度の休みでは里帰りには充分でなく、とくにアジア圏の学生たちにとっては、聖属性塔カセラドルで行われるミサに参加し、故郷へ手紙を送る程度が関の山で、中には直後に迫った卒論の締め切りや、テストに備え … ...
金曜は同室の黒須イアソンが全コマ授業の日で、俺は餌付けかよって思いながらもガムとかロリポップとかジュースとか、ともかくしゅわしゅわ甘いものを用意して、あとは念のため、一応念のためにハンドクリームの残量を確認して部屋もばっちり掃除した。四限が終わると俺は清矢くんを誘った。 ...
衝撃シーン。そう思ってしまったのは何でだろうか。家宝のほとんどを持ち逃げし、返さないと頑強に言い張っていた兄、祈月夜空が、「カナリアのような」と呼ぶ少年と愛を交わし合ってるのを見てしまった。 それは一瞬だったけれど、段の入った長い髪を、さらりとウィリアムがすくいとった。そして … ...
俺の清矢(せいや)くんは軍で働くために鍛錬もするけど、いつもデオドラントにまで気を使ってる。日本での神兵隊訓練の後はよく拭きとってハッカ油のスプレーをしてたし、自分でくんくん匂いを確かめてる。使い過ぎてハミガキ粉みたいな香りになっちゃって、目にしみる、なんて言って笑ったりとか。 … ...
兄・夜空から無事御家の重宝を取り戻し、アルカディア魔法大学に入学した祈月清矢(きげつ・せいや)は、土曜一時限目の授業、「アルカディア島講義」に出席していた。新入生必修授業である。魔法の専門教育ではなく、アルカディア島の公用語およびその歴史を学ぶ総合教養科目だ。 ...
アルカディア魔法大学は新入生の入寮をひとしきり終え、後は入学式を待つばかりとなっていた。魔力選抜十二番通過の櫻庭詠(さくらば・よみ)は聖属性塔を出て、ちょうど学園都市中心部に位置するローク神殿付属・風属性塔に向かっていた。 ...
時は七月、時刻は四刻半。アルカディア魔法大学闇属性塔ではクラウス第一王子殿下の発令により特別賓客室にて会合が行われていた。列席者はロンシャン亡命者である草笛・K・夜空、そして彼の留学時からの道連れである大麗官吏・葉海英、そしてクラウス殿下自身と、新入生のトピアス・シルヴァノイネ … ...
相対した恋人が、無骨なロッドを振りかざして叫ぶ。 「Magica!」 彼の右手のひらに埋め込まれた魔方陣が光り、単純な魔力の圧がウィリアム・エヴァ・マリーベルに襲いかかる。ウィリアムはにやりと笑い、天使の輪の浮く金髪を振り乱して応戦する。彼のマギカは有り余る魔力で相手を力任せ … ...