盛夏の夜の魂祭り(第三話)嫉妬の業火は諸刃の剣(1)
01 幻想と崩壊のラ・ヴァルス 三拍子のリズムが不吉な旋律で響く。交響詩が描くのは、ハイヒールを履いた女性の手を夜会服の男性が取り、熱に浮かされたように踊る幻想だ。かかっているのはモーリス・ラヴェル作曲の『ラ・ヴァルス』。陶春県服飾の大店、草笛家の昼下がりには似つかわしくない音 … ...
01 幻想と崩壊のラ・ヴァルス 三拍子のリズムが不吉な旋律で響く。交響詩が描くのは、ハイヒールを履いた女性の手を夜会服の男性が取り、熱に浮かされたように踊る幻想だ。かかっているのはモーリス・ラヴェル作曲の『ラ・ヴァルス』。陶春県服飾の大店、草笛家の昼下がりには似つかわしくない音 … ...
06 若人たちのつどい 翌日、清矢は小学校が終わると広大を誘って渚村の夏目私塾に寄った。広大も、昨夜の結城博士の訪問が気になっているらしい。夜空についての話があると言って、大分閑散としてしまった夏目家に入れてもらう。古狼の忘れ形見、三つ年上の文香が中学から帰ってくると、さっそく … ...
1 夏目雅呪殺事件 三年前、陶春県汐満市渚村。八月某日。村の中央会館にて、とある人物の葬式が行われていた。永劫の帝こと『永帝』を歓待するために、たった十二日間で季節の風流を味わいつくした『春夏秋冬の宴』以来、この地に根付いて村人の教育に従事してきた学者一族、夏目雅の告別式であ … ...
俺の世界が広がったのは、十一歳のときだった。 新しく神兵隊に入ってきたその子は、当時からまっこと綺麗な男だった。 1 不思議になつかしいあの音 日ノ本の春は桜舞い散る典雅な季節である。ことに、常春殿地方ではヤマザクラやソメイヨシノの錦模様が爛漫と輝き、うすくれないの花弁が雲 … ...
アルカディア魔法大学はクリスマス休暇だ。俺たち極東からの入学生は、たった一か月半の休み程度で日ノ本に帰るわけにはいかないから、居残り組に入っている。だけど世話になってる黒須先生とその息子さんのイアソンは帰るっていうんで、俺は堂々と恋人の詠の部屋に入り浸ることができていた。聖属性 … ...
第四章 46 寮へ帰り着いたのは十二時を過ぎた夜半だった。学長側の監視役から真相の代弁者となったウィリアムは闇塔に収容され、事態収拾が成るまでは聖属性塔へは返さないことになった。夜空についても同様で、塔十階の使われていない職員用宿泊室を二人まとめて宛がわれた。 ...
第四章 41 それからの夜空は元のように快活になった。『ゴースト』からの要求にはあえて乗らなかった。ウィリアムやシスター・グラジオラスに餌を与えたくはなかったし、シャドウウォーカー支部にとどまっている彼らが起こす醜聞とは無縁でいたかったからだ。佐野教授の様子を見るに、闇塔では協 … ...
第四章 36 交易多層都市ロンシャンの中央帯は垂直積層型の線状都市である。エトランゼ・タウンはその最下層にあった。夜でも空は見えず、闇には時代遅れの燃料ランプだけが輝いていた。廃墟じみた教会のそばには噴水広場が広がっており、人影はまばらだ。夜空は薄汚れたトーガだけの格好で、噴水 … ...
第三章 31 五日後には毎週恒例、マスター・アジャスタガル率いる早朝戦闘訓練が行われた。冬の到来を感じさせる曇り空のその日もまた飛び入り参加があった。 質問状を送り付けてきたジョージ・ヒューゴである。もしやシリルの件での報復かと、夜空たちははじめ身構えたが、彼はさっぱりと笑っ … ...