お題「雑誌」「モデル」

 金曜は同室の黒須イアソンが全コマ授業の日で、俺は餌付けかよって思いながらもガムとかロリポップとかジュースとか、ともかくしゅわしゅわ甘いものを用意して、あとは念のため、一応念のためにハンドクリームの残量を確認して部屋もばっちり掃除した。四限が終わると俺は清矢くんを誘った。

「なあなあ清矢くん。この後俺の部屋で一緒に勉強しよーぜ」
「勉強? 下半身使ったやつは聖属性塔ではごめんだぞ」
「ちげー。そんなことしねー。イアソンにチクられたら俺、退寮だし」
「そういや俺も|詠《よみ》に試したいことがあるんだよな。ちょっと待ってな。時間足りるといいけど」

 清矢くんはそう言ってにんまり笑うと、充希といっしょに風属性塔まで戻ってった。せっかくの二人きりになるチャンスだってのに、充希まで来たらヤダなぁって俺は心の中で泣いた。

 清矢くんとの恋は、アルカディア大に来てからそんなんばっかだ。せっかくカラダで結ばれたのに、清矢くんはセックスを渋ってばっかり。日ノ本にいたころとは違ってゲイバレ気にせずイチャイチャして、恋人だって公言できるのはいいけど、肝心な恋人時間が足りない。

 いじけながら待ってると、清矢くんが部屋に直接やってきた。プラスチック製の何かカラフルなアンティークカメラを持ってきてる。神威研究室に置いてあったやつパクってきたんだ、なんて恐ろしーことを平気で言う。俺の恋人は見た目どおりの優等生サマだけど、単なる柔和なイイ子ちゃんではない。そんなら好きにはなってねーけど。そんで、含みのある色っぽい笑顔で俺に言った。

「なぁ、詠。エッチな写真とろーぜ」
「は? 今なんて言った?」
「詠は服はまだしも身体だけは鍛えてるじゃん? だから色っぽい写真が欲しい」

 清矢くんは相変わらずちょっと意地悪な言葉で俺を刺した。故郷で雑誌見てたら「ファッションファイターヨミ」って笑いだしたのを思い出す。そんなにダサくねーよ! 清矢くんに言われてからは、雑誌に載ってるモテファッションと同じデザインそのまま買うようにしたし。それがまたビミョーに似合ってないとか口出してきて、そんで最終的には「どんなにダサくても詠が好き♥ 愛してるぞー」とか言って上手くごまかしたつもりでいやがるから本当にムカつく。エッチできるようになってからは俺が攻め手だから少しは溜飲も下がるかと思いきや、「場所がない。バレたら退寮」の一点張りだ。

 俺の清矢サマはお母さん似の古風なうつくしー美少年顔で悪い悪い遊びを提案する。

「さ、上半身脱いで。俺のオカズにしてやるから♥」
「や、やめろよ。だいたいどうやって現像すんだよ」
「これ、撮ったはしからプリントするやつだから二、三枚ならバレねーよ。欲しいなー、詠の半裸写真」

 早くしないとイアソン帰ってくるぞみたいな脅しかけられて、俺はしぶしぶトレーナーと中に着てたカットソーを脱いだ。アルカディア大に着た後も毎日剣術の鍛錬と身体づくりはしてるから、何の恥もないはずだ。腹筋も割れてるし。清矢くんはちょっと悔し気にふふんと笑う。

「やっぱ詠はハダカのほうがいい男っつーか、フルヌードはさすがにやばいな。さーて、小道具小道具」
「小道具って何だよ!」
「なにこれ。食べようと思ってたの? じゃあ剥いたげるから、あーんして」

 ロリポップの包装紙をはがして、どぎつく赤い飴玉を、俺の唇に押し当てた。俺は敗北感にまみれながらそれをあむっと咥えて、指示どおりにベッドに寝転んで、なめた。

「もっとヤらしくペロペロして。乳首舐めてるみたいに♥」
「……清矢くん。変にエロいこと言うなよな」
「ちょっと飴に歯立ててみて。そうそう、いいよ詠~。ワイルドにいこーぜ」

 清矢くんはセミヌードの俺にレンズを向けながら呑気にそんなことを言う。俺はどうしてもうまくノリきることができずに、動きはぎこちない。

「目線こっちこっち。ポーズ取ってみなよ、モデルみたいに」
「誰かに見られちゃったらどーすんだよ。俺やだよ、こんな写真とるの」
「……じゃあ、詠も俺の好きなとこ撮っていいから。詠の大好きなハメ撮りだってオッケーだぜ? 局部写真も。それに比べたら断然、大人しいだろ」

 口ではそう言ってるけどぜってーオッケーしねーくせに。

 あと、そんな写真べつに俺は大好きじゃない。た、多分。大体何に使うんだよ、局部写真なんて! セックスのとき見せつけて言葉責めするくらいしか用途が思いつかない。「なぁ清矢、お前のお尻、今こんなになっちゃってるんだよ」的な? さすがにそれは変態すぎるだろ。終わった後口きいてもらえなさそう。あとオナニーのときにオカズにするとか? 空しすぎ。だいたい誰かに盗み見られたらって思うとそれだけで全身の産毛が逆立つ。清矢くんは、エッチの時だけは、俺だけのカワイーお雛様になる。それを堪能するのは俺だけの特権であり、他人に見せびらかすモノじゃない。

 色々考えちゃってむっつり飴玉くわえてると、待ちきれなかったのか清矢くんがパシャっと音たてて写真をとった。カメラから吐き出されたフィルムの中で、半裸の俺のふてくされた表情が感光して徐々に像を結ぶ。俺たちは些事を忘れて写真を観察した。

「うーん、ワイルドウルフって感じ。ちょっとピントボケてるかな。じゃ、詠も撮っていーよ、俺の痴態」
「痴態はちょっと……ヤバすぎない? 流出とか考えるじゃん」
「そんなこと、詠がやるわけねーだろ、信用してる。それとも健全なのにする? 清矢サマのとびっきりのアイドルスマイルくれてやるぜ?」
「……じゃあ、ローブも下もぜんぶ脱いで、俺のベッドに寝転んで」

 ……これってやっぱり『ハメ撮り』だよなぁとか思いながら、全裸になった清矢くんの、挑戦的な表情とピンクの乳首をわざわざ、寮のベッド背景で撮っちゃう。ファインダーごしに俺の舐めてたロリポップにキスしてる清矢くんは期待どおりエロかった。オパールみたいにきらきら真っ白な肌。つややかな黒髪に、ぽってり紅いクチビル。絶対フェラの暗喩に違いないちょっとだけ曲げられた舌先。見てる人の欲情をあざわらうみたいな余裕ある笑み。俺は愚かな犬みたいに股間をきちきちにしながらインスタントカメラで恋人を撮る。……ここ、聖属性塔だぞ。聖職者宿舎。『みだらな行為』は当たり前に禁止事項。何重もの冒涜でじっとり興奮が沁みてくる。

「詠の分はオッケ?」
「……うん。なぁ清矢くん」
「これで充分だよなぁ、じゃあ服着よ。最後にツーショット撮ろうぜ」

 そんな生ぬるい逃げ方ゆるさない、って思った。俺はあつらえられた据え膳をベッドに押しつぶして、ひどく乱暴なキスを始めた。

「んっ、ふぁ、よみっ……! ダメだろ、も、時間ないっ……!」

 持ってた飴を奪って、イチゴ味のキスを続ける。

「コレ、清矢くんも舐めて」
「ん、はぷ、ん……♥️ やば、唾液まざっちまう……!」

 イヤとは言わせない。舌を下品に出して赤い飴をペロペロするのが扇情的で、生ぬるい甘いだけの味に興奮する。俺は飴の棒をつかんで乳首にくりくりと塗りつけ、そのまま口に含んでイタズラした。

「や、やめろよ……! なに、遊んでるんだ、詠のくせしてやらしいな」
「おれの清矢くんだから……おれが味付けして食べる」
「ど、どこ弄ってんだよっ……!」

 慌てる姿に胸がすく。乳首だけじゃもったいなくて、クチビルにもほっぺたにも喉仏にもおんなじことした。しだいに飴は邪魔になってきて、俺はガリガリ噛み砕いて飲みこんでしまった。イチゴ味が残ってるうちにまたキス。

「清矢くん、俺のちんこなめて」
「……わかった」

 不躾な要求にも清矢くんは従順だ。もう塔の窓の外は夕暮れに染まり始めてる。同室のイアソンが帰ってきたらゲームオーバー。だから進展を急いでる。俺が満足すればなんとかつくろえるから。俺はベッドの上に膝立ちして、ジャージの下をずり下ろし、勃起したアレを見せつける。

「わ、詠のちんこ、カッコよくなってるじゃん」

 清矢くんはそう言って俺の勃起を掴もうとする。俺は滑らかな頬を軽くちんぽで叩いてから、小さめのクチビルにぎらつく亀頭を押し当てた。清矢くんは屈服して切っ先に口づけしたあと、手で睾丸まで優しく包んで垂直なちんぽに頬擦りまでする。先走りが顔についちまうけど気にもしてない。

「ん、ふぁあ……よみの、おっきなちんぽ……!」

 清矢くんは感極まったように言って、俺の股間に向けてうなだれて、ちんぽの先に丁寧なキスをしつつ、竿をこすこすシコってる。亀頭の切れ込みに舌が滑る。唾液とカウパーが混じって根元に垂れる。その刺激でびくんと腰が震える。

「清矢……しゃぶって。いっぱい気持ちよくして」

 「くん付け」をやめた俺のセリフはお願いじゃなくて命令だった。清矢くんは素直に先端の膨らみを越えて、竿まで口に含んでくれる。舌は裏筋にくっきり張りついて、軟口蓋までずりりと亀頭が塞ぐ。柔らかな粘膜に滑って、ちんこ全体が本能的にざわつく。

「んっん、くふ、ん……♥️ よみの、おいしい」

 俺は清矢くんのさらさらした髪に手をつっこんで、頭皮ごと掴んだ。ヒドイ扱いだって分かってながら、快感がほしくって腰を振ってしまう。舌が竿に絡んで、ちんぽ全体が隙間なくきゅうっと吸われる。まっさらなお湯で洗われたみたいに圧倒的な心地よさ。喉奥まで突いて、苦しげに形のいい眉をひそめる清矢くんの横顔に興奮する。

「せいやくんっ……!」

 指通りのいい髪をかきあげては頭を両手で撫でさする。ちゅくちゅく水音立てながら、クチビルが竿を擦ってく。根元を指の輪がリズミカルに搾ってく。俺は膝立ちのまましゃぶらせて、擬似的な挿入に浸ってる。

 はーっ、はーって息を低く吐きながら、親指が裏筋をぐにぐにする快感で腰が吊りそうだった。清矢くんがきゅうーって、口をすぼめて、真空を作って膨れ上がった先端を吸い込む。

「っく……うあ、くっ、清矢、清矢、おれっ、出るっ♥️」
「ん~~? んんっ、んむっ♥️」
「ああ……! 清矢、きもちい、吸ってっ♥️」

 俺は裏返りそうになりながらもかくかくっと動きを激しくして、ドッと口から性器を引き抜いた。わざとだった。頬に、すっきりした鼻筋に、紅いクチビルに、裸の胸に、ぐいぐいっと根元からちんぽをしごいて、たっぷり精液をかけた。ぷりぷりした液塊がビュッビュッと生白い肌へ叩きつけられる。俺ははぁはぁ息を荒げながらちんぽで液を塗り広げた。胸から顎へ、その上の顔へ。清矢くんは怒りもせずにぺろぺろ舌出してルビー色の先っぽを舐めてくれる。きれいな清矢くんは、俺の精液ベッタリつけて、無惨に汚されちゃったけど、文句ひとつ言わない……エッチのときはしおらしいんだ。

「清矢、ごめん、舐めさせて」

 俺は焦って清矢くんを押したおした。清矢くんは曇り眼でぼんやりしたまま、紙のようにベッドと俺の間に挟まれた。顔の輪郭を両手ではさんで、正面からぎゅっと口づける。清矢くんは予想通りに予定調和なひとことをささやいた。

「あのさ、イアソン先輩帰ってきちゃう。もう終わりにしよ、もっかいしゃぶったげるから。な、詠?」
「……清矢から誘った」

 頑強にそう言い張りながら頬やら首やら胸の盛り上がりやらをぺろぺろ舐めた。大好きなやつの肌って味なんかないはずなのに不思議と美味しい。ピンクの乳首をしゃぶりたてて、むにむに薄い胸板揉んで、背中を掃くように撫でて、裸のまま全身でぎゅうっと抱きついた。この安心感と充足に勝てる楽しみなんて、他には何もなかった。

 自然と股間もまた漲ってきてしまう。

「詠、入れたいの? でも見られたら」
「じゃあ、早く慣らして。俺も手伝うから」

 俺は枕元に隠してあったクリームのチューブを取り出して見せつけた。清矢くんの返事を聞かないうちに手のひらにたっぷり出して、尻の割れ目に滑らせる。

「はぁ、そんなら、早漏期待してる……!」

 ちょっと悔しそうにそれだけ言って、清矢くんは尻の割れ目を俺の手に擦り付けた。俺は指を揃えて入り口を揉んでやる。ぐっぐっと押し込んだあとに、クリームを足して小指から潜り込ませた。きゅぷっと中が吸い付いて、否応なしに期待が高まった。

 くにくに、狭い肉穴を拡げながら埋め込む。クリームのべたつきに助けられながら、指を太いのに入れ替えてく。薬指に人差し指に中指。くんって曲げて、ちんこの裏辺りを押し込んでやると清矢くんの体が力む。

「んっん、あぁ! 感じさせないでいいからっ……! 早く、拡げてっ……!」

 俺は楽しくてしょうがない。腹のほうに反り返ってる濃いピンクのちんこを口で捕まえて、れるれる犬みたいに舐めしゃぶる。後ろのほうは、二本入れるまではまだキッツい。

「ンッ、はぁ、あ、詠っ……♥️ 詠っそっちはいーからっ、あ、あーっダメだってば」

 と言いながらも清矢くんは腰をくねらせてキュンキュン指を食いしめちゃってる。俺は当てられて中をグニグニ拡げてる。テクなんて考えてる余裕すらなくって、じゅぽじゅぽ上下にクチビルを滑らせて過激にちんぽを刺激した。第二関節どころか根本まで俺の中指を呑み込んだ尻穴は、くまなくクリームを塗り込まれて次第に性器に変わってく。

「あっあっ、うっ、くぅぅ……♥️ よみっ、激しっ、ンッ、あ」

 清矢くんのうっすい腰が、小ぶりでまるい可愛い尻が、マットレスから浮き上がってしまう。はしたなく振っちまうくらいにいいんだ。イカせてあげたいのは山々だけど……!  俺は非情にも口を性器から離して、清矢くんの脚の間に陣取って、腰のしたに枕なんか敷いた。尾っぽは行儀よくぺたりと押しつぶされて、紅く上気した尻の谷間にほぐれたすぼまり、まるく膨らんだぷりっとした玉、すっくと伸びたぺニスまで全部一直線で見えちまう。かなりの征服感。

「バカっ、あんまジロジロ見んなよっ……!」

 憎まれ口はすでに他愛ないだけだ。俺はちんこに入念にクリームを塗りたくって、乳白色に化粧までさせて、指で浅く肛門を開いた。そして生硬い亀頭を押し当てて、円を描いて焦らす。

「自分で呑んで、清矢」
「っ……! 後でオシオキだからな!」

 強がりの一方でお尻の締め付けが緩んだ。俺は潤滑剤に助けられ、ずるりと一番太い首の部分を埋め込む。そのままぬっぬっと奥へ奥へ侵入していく。清矢くんは腰を小刻みに振って頑張って受け入れようとしてた。

 ナカの感触はもう、たまんない。ぬらついてふんわりした孔が、突っ張りながらもきゅんって俺をくるんでくれる。あったかくて柔らかく、痺れるほど心地いい粘膜が、俺のちんぽにきゅんっと可愛く食いついてくる。脳ミソまで指でくすぐられるような快美感で口元まで緩む。刺激がじんじんと根元の袋まで染みとおってく。

「清矢っ、清矢♥️ っあぁ……!」
「ンッ、はぁっ、ンッ、あっあっ、よみ、いきなり元気すぎっ……!」
「早漏期待なんだろっ? 手加減しねー!」

 そう宣言して腰を左右にいたぶるように振ってやった。それから深ーく、浅ーく、ゆっくりストローク。敏感な鈴口で舐めしゃぶるようにお腹の中をなぞってやった。

 いつもみたいにガンガン突くだけじゃないその動きは、清矢くんのお気にも召したようだった。声が一段階甘く媚びる。

「ああっ、うっ、はぁ、んっ、よみっ、よみっ、好きっ♥️」
「清矢っ、俺もイイっ、もっとケツ振っていいからっ、感じまくれっ」
「うーっ、あぁっ……よみぃ、くぅっ、ふぁ、あ、あっ」
「俺のちんこイイ? なぁ、清矢。そんならもっと声出して」

 ねだってくちくち突きいれると、清矢くんはわざと声を抑えた。

「ふっ、あ、くっ、こ、声出させたいならっ、もっと浅いトコ、トントンしてみたら?」
「はぁ、あァ、このへんか? なぁ、清矢くん……!」

 出口からちょうど十センチもないところを腹側に押し込んでやると、清矢くんの顔がぎゅっとしかめられた。

「うん、イイ……よみちんぽ好きっ……!」
「ココが弱点だなっ、わかった」
「うっ、ァアっ、あっあっ、ンっ、く~~ッ、ううッ♥」

 身体ごと小刻みに揺らすと、とぎれとぎれの嬌声が漏れる。

 気持ちよくて、得意で、あんあん鳴く清矢が可愛くて、俺は必死で腰を使った。愛しくて、憎らしくて、擦りきれちゃいそう。

 股をびっちり密着させて、上半身に抱きついた。顔にあてずっぽうにキス。背中を抱いて、脚目一杯開かせて、狭苦しいけど滑らかで柔らかな孔に、敏感なちんこ埋めてる。うるうるした瞳、覗き込んで、腰だけは意地汚く快感を貪りながら、全身で甘えかかる。心は『よみちんぽ好き』の一言ですでにイッてた。

 小造りに整ったおとなしそうな顔立ち。外人たちがスモーキークォーツって誉めそやす、けぶったような黒目。さらり流れる黒髪。石英みたいな白い肌も、今は全部俺の独占なんだった。俺はガタガタっと動きながら、すり寄ってくる清矢くんを抱いて、ずぷっと奥まで刺した。そしてちんこをひくつかせて、ねじりながら入れこむ。暴発寸前の勃起の形までわからせようとするいやらしい動きだ。清矢くんは耳元でとろけた声でささやいた。

「よみ、お願いだから、ナカで出してぇ……♥️」

 多分わざとな甘いおねだりに、耐えられなかった。俺は清矢くんの鋭い肩をぐっと抱きながら、歯を食い縛った。入れたい深さと角度で何度も何度も突きこんで、射精するだけの機械になった。ビュッ、ビュッ、ビュルルッと強いリズムで、動きながら出してしまう。

 ちんこの芯を内側から真っ白な快感が焼いていく。精液が狭い口をくぐり抜けるのに合わせてびくんびくんと性器がのたうって、鈍い恍惚の針が全身をマヒさせた。俺は愛しい男を抱いて、濃い精液を注ぎ込んだ。いつもながら万感の想いだった。

 ずっと繋がりあっていたかったけれど、時間には限りがあった。俺は強烈な脱力にまかせて結合を解いて、どさっと清矢くんの上に倒れこんだ。ゆるりと脚が俺の脚に絡んでくる。清矢くんは俺の耳たぶを優しく噛んだ。

「詠、服着ような? ……俺ももう帰るから、どいて」

 クリームと精液でどろどろの局部をお互い拭いて、のたくた服を身につける。窓を開けて匂いと熱気を逃すと、清矢くんは俺の肩を抱いて、カメラを構えた。

「記念写真とろうぜ。中出し記念。ピースピース♥️」

 改めて恥ずかしくなりながら自撮りしてると、ガチャガチャと部屋の鍵が開いた。ボーッとした風情の黒須イアソン先輩がちょうど戻ってきたのだった。時刻は七時前後だろう。ちょっとしらけた感じで、清矢くんはろくに挨拶もせずカメラと写真持って帰ってった。

 翌日、必修講義で渡されたのは戦衣着てマンゴーシュ構えてる決め顔の清矢写真だった。

「あのさ、俺に渡すのこれじゃなくない?」
「……へー、じゃあ詠ちゃんはどんなお写真がほしかったの?」

 清矢くんの同室の充希が訳知り顔で聞いてくる。清矢くんは含み笑いして首を振った。 「清矢サマのファンなんだから持ってなきゃだろ。サインもしてあげよっか?」
「ちげー、ファンじゃねー、恋人だっての!」

 俺はスネまくって、後ろから清矢くんに抱きついた。充希はわざとらしくからかう。

「恋人同士でセミヌードお写真ですか。詠ちゃんイイご趣味だこと」
「ちげー! 俺のシュミじゃねー!」
「はは。そういう強がり言う? 詠のスケベ」

 俺はむくれながら決め決め写真をひらひらさせて、卓に突っ伏してぶつくさ言う。

「……どーせなら笑顔の写真が欲しかった」
「ツーショットは俺のだから」

 清矢くんはそう言って俺の頭をワシワシ撫でる。想いを遂げたはずなのに、もう抱いてやりてーって気持ちになってた。俺と清矢くんの恋は、一生こんな追いかけっこなのかも。

(了)

※この短編は独立した軸としてお楽しみください