直情お人よしオオカミは同い年の幼なじみに心身甘やかされてますっ!

 同室の黒須イアソン先輩が風邪で熱なんか出したので、俺が寮の仕事を代わってあげることになって。五時に起きてカセラドルに集合したらそこにいたのはサボリに厳しいウィリアム・エヴァ・マリーベル。何でイアソンが来ないって難癖から始まって、冷や汗かいて説明してから、たっぷり一時間かけて聖堂の掃除だった。雑巾を絞る手もホントかじかんでツライ。そのあと頃合いを見て抜け出しそこねて、俺はクライスト教の朝のお祈りにたっぷりと付き合わされてしまった。オマケにもう何度目かわからない、改宗のお誘い。だから俺は神道だって! と逃げ出して、練兵場に出て行くと同級生の剣士仲間、アルチュールやダニールに遅いって顔される。

 仏頂面で木剣とって、剣気は禁止で鍛錬。正面、返し、早素振り、型をとりあえず振り切るけど、なんつーか、脇腹鍛えるっていう名目でいきなりパンチ入れてくるのよせよなー。あと武器抑えて投げてきたり。腰落として飛びのいて、それから俺も刺突で応戦だ。クルセイダーが見てるとはいえ、みんな流派も違うしあっという間に乱戦になった。ダニールの大振りな剣筋は見た目より何倍も巻き込みが広くて、俺はしたたかに肩を打たれ、すかさずアルチュールが「ビクトワール!」なんて叫ぶ。

「ざっけんな! 負けてねーよ!」

 俺も水平にざっくりと振りぬいて、剣撃の開始だ。斬撃を逸らす、はじく、開いたすきに突き入れる! ときには袈裟斬りをワルツみたいに円で動いて避けては、背中をとって振り下ろす。それは逆手持ちで防がれて、力自慢のダニールは逆に剣先を跳ね上げてきた。 「ヨミ、往生際が悪いぞ!」

 俺はバッと後ろに飛んで躱したけれど、ダニールは踏み込んできて足元をざっと切っ先で掃う。危ない危ない、真剣だったら足首スパッとやられてたと思うと肝が冷える。ダニールはその後また手首をぐっと返して唐竹割にしてくる。真向から剣で受けてしまった俺は、力負けしてはずみで武器を取り落とす。

「ダニール、ビクトワール!」

 アルチュールがもう一度今度はちょっと笑いながら宣言。俺はどーしようもなくて、さすがに授業も始まるし、ぶつくさ言いながら片づけに移る。ダニールは去り際に言う。

「負けた祝いにテヌー・イリアンとのデートをセッティングしといたぞ。感謝してくれ」
「デート!? ざっけんな、俺には清矢くんがいるし」
「美少女とデートすればホモセクシャルなんか一発で吹っ飛ぶだろ。午後イチで神殿からの荷物受け取り。そのあとは自由時間だ。健闘を祈るぞ」
「ウッソだろ、ダニールが手伝い面倒になっただけじゃん!」
「負けは負け。荷物受け取ったらちゃんと女宿舎まで運んでやれよ」

 手のひらを振りながらそう言って、ダニールは練兵場から逃げてった。押し付けられたせいで、午前中はもちろん、午後も食堂でチンタラ飯食ってる場合じゃない。

「ありがとうございますぅ、……だけどどうして、ダニールさん来ないんでしょう……」
「イリアン、俺じゃ不満?」
「不満というか……そりゃあ希望を通すならアルチュールさんが一番良かったですけどっ! あのっ、できたら七階の女子宿舎までコレ持ってもらえますか? 非力な私じゃとてもやりとげられる気がしなくて……」

 ……まぁ分かってました。ローク神殿からの入学生で、唯一聖属性塔配属になったテヌー・イリアンの中で、聖属性塔の三剣士の順位付けはいつも、金髪碧眼の正義漢アルチュールが一位。次がなんだかんだ構ってくれるルーシャンから来た大柄のダニールで、俺は最下位。そのくせに異様にこき使ってくるわけ。木箱の外観におののいたけど、中身は布だかなんかで軽いみたいだ。幸いではあるけど、目標は七階だぞ……!?

 足元見えない状態で木箱を抱えあげて休み休み七階まで上がった。お礼にお菓子くれるって言うからコーナーで待ってたら、シスターの同級生、マリアンヌが追いかけてきて目を回す。

「よ、よ、ヨミさんっ!? 女子宿舎は男子禁制ですよっ? マリーベル先輩たちならともかく、異教徒のあなたが何の御用でしょう? まさか、不埒な目的では……! 牧師さまに言いつけますっ!」
「違う……俺はイリアンの頼みで登ってきただけだよっ! これ! ローク神殿からの荷物だって!」

 普段は女宿舎なんて足を踏み入れもしない俺は騒がれて早々に退散した。……お菓子もらい損ねたけど、あとで男子宿舎まで届けられることはないだろうな。

 その後空きっ腹でみぞおち痛いくらいなのに地階まで降りてって、寮付きの食堂でエサみたいな食事掻きこんで、部屋に帰ると息子さんのイアソンを心配した黒須武志先生が陣取ってて、クスリだの氷嚢だの頼まれて、十階の保健室まで往復。フルーツジュースまで作ってやってあげて、俺はいい加減きつくなってきた。

 ちょっと出てきますって言ってマフラー巻いて、聖、闇越えて風属性塔までジョギングする。寒いからこうでもしないと凍えちゃう。五階サロンまで到達すると清矢くんが充希と属性魔法石の祭壇部屋、後ろの方の卓付き席に座ってのんびり話してた。ここもローク神殿付属だけど、聖属性塔と違って聖職者関係だけの寮ではないから、歓談に使っていい。俺はフラフラ歩み寄って、清矢くんの肩を抱き締めて捕まえて、こめかみにぎゅっと顔を擦り付けた。

「詠、どうしたよ」
「せいやくん~~~!」

 さらさらきらきらっとした段入りの黒髪にミントシュガーの涼しい甘い香り。雪みたいな白肌と黒目がちなうるうるの瞳。まっしろで、たまにグレーの入り混じる、美しい獣耳に行儀いい尾っぽ。

 俺、おれ清矢くんに会いたかったよぉお!

清矢くんは勝負のときは正々堂々として足払いなんかしねーし、朝早く代理で掃除に現れたらイイやつだって誉めてくれただろう。聖属性塔の三剣士の順位付けだって絶対に俺! を一位にしてくれる。俺を使ったら必ずお礼言ってくれる。まー使うなって話だけど、ともかく。俺はうれしくてあつかましく近づくと、横髪をさりさりと鼻の頭でかき分けながらほっぺたに唇をつけた。

「もー、俺聖属性塔ヤダ……!」
「ダニールが悲しむぞ。お前には一目置いてるみたいじゃん?」
「俺も清矢くんとおんなじ部屋がよかったよぅ……マジ、つれー」
「詠ちゃんだいじょーぶ? 誰かに何かされたの?」

 レモンティーすすりながら紙に何か書いてた充希まで立ち上がって俺の背中を叩いてくれた。一個一個はそんな大層なもんでもないんだけど、積み重なると何だかシンドイ。とくに朝イチダニールに納得いかねー負け方したのとかさ! 俺は清矢くんのシャツの襟をひっぱって、無防備な耳へストレートに恋人モードでささやいた。

「清矢くん、俺、二人っきりになりたい」
「はえーよ。ちょっと落ち着け。俺、ちょっと用足ししてくるわ」

 清矢くんはそう言ってサロンを抜けて階段上がってった。俺は空いた席に座ってぐだっと卓に突っ伏す。

「充希は何してんの?」
「えっとね、パーティーの計画。大晦日から新年までみんなでオールしようって」

 鉛筆を器用に指で回して、充希はシガーチョコを咥える。俺も一本貰って、チープな甘さにすこし慰められた。十五分ぐらいして清矢くんが戻ってくる。

「……おけ。充希、ちょっと部屋独占するけどいい?」
「ん。詠ちゃん、大変なら俺にも言ってね」

 そう年上らしく物分かりよく譲ってくれる充希は(清矢くん関係ではムカつくこともあるけど)何だかんだイイ奴だ。

 戻ってきた清矢くんと待ち合わせて、部屋に入ってまずカギ閉める。充希は合いカギ持ってるだろうから、最終的にはあんま意味ないけど。清矢くんは木のトレイにツートンカラーのマグカップ乗せてカラカラと小さいスプーンでかき混ぜてた。清矢のほうのベッドに腰かけて、ジンジャーミルクティ? とかいう飲み物を俺に分けてくれた。

「要するに紅茶に牛乳とショウガ入れたってわけ?」
「ちゃんとハチミツもシナモンも入れたよ。清矢サマのやさしさ拝んでから飲んでね♥」
「どこにそんなに材料あったんだよ……」
「食堂がキッチンに置いてってくれるから、手間さえ惜しまなければけっこういろんなもん食べられんの」

 横文字に弱い俺はそんな風に翻訳したりして軽口たたきながら、慣れない味をドキドキしながら口に含んだ。シナモンシュガーのにおいが最初に押し寄せてくる。ミルクティの甘ったるい味に、ショウガがぴりっとして美味しい。あったまる気がしてそっこーでゴクゴク飲んでしまった。ハチミツのなめらかな甘さがうれしい。

「清矢くんありがと、なんか復活した感じ」
「女子力エナジードリンクって感じだよな~。美味しかった?」
「ん。清矢くん……そんでね」

 マグを机に置いてもらって、となりに座る。肩がちょっと触れ合って、清矢くんはあいかわらず毛色よく可愛い。こっちを見てる柔らかな(そう、柔らかなのだ。普段凛と張りつめてるけど)美貌に癒される。押し倒して、まず今日は清矢の両耳、いっぱい可愛がって、それから沢山乳首吸って、とかいろいろと考えてるうちに清矢くんのほうから俺の胸板を押してきた。俺は攻め手を譲り渡して自然に倒された。小作りで端正な顔に上からじっと見つめられ、情が胸にせりあがる。

「詠……何かあったんだろ。清矢サマに話してみ?」
「清矢くん、後で言う~、だからさー、膝枕もしてくんね?」

 甘え全開でそうねだると、清矢くんはうなずいて俺に膝を揃えて貸してくれた。ちょっと硬い感じの太もも。首裏のへこみにほどよくフィットして心地いい。横寝して、そこはかとない柔らかさに頬を迎えられる。手をうろつかせると、ぎゅっと指まで絡めて握りなおしてくれた。俺の恋人は俺を甘やかすのに余念ない。

 まぶたを閉じて、くたりとベッドに体を預けた。清矢くんは俺の額や頬を指の腹でさらさら撫でて、マッサージしてくれる。

「ん~、清矢くん♥」

 俺は気持ちよくなって、首を反らしてさらに伸びをして、清矢くんの細い胴に片腕で抱きついた。暖かいお腹に顔を埋めてすーはー深呼吸。くすぐったいよってちょっと笑われる。嬉しさでクンクン甘えながら身体をよじる清矢くんを押さえ込みつつ、尾っぽをブンブン振ってしまった。

「よみ~、可愛い詠、思いっきり甘えていいからな♥️」

 聖属性塔の男連中にはあり得ないって気持ち悪がられるだろう。でも所詮独り者の悪態だよとも思う。はしゃいだ時間が終わったら、俺たちは沈黙して互いの存在をじっと、感じてた。

 日ノ本の山岳部、国引き神話の残る地方から一緒に出てきて、生家とか地元のアクセントなんかほとんど清矢からしか感じない。十一歳で出会ってから、俺はずうっと清矢くんの飼い犬、パートナーだって思ってる。綺麗で気が強いのにときどきちょっぴり弱くって。お母さん似のうるわしーしとやかなお顔で、めちゃくちゃ辛辣だったり大胆なこと言うような頭いいとこも好き。宮さまの孫だぜ? 夜空もそうだけど、こっちはより秘蔵の玉って感じだ。お母さんの宝石つけてたとき、本当に高貴に見えて似合ってて、傷ひとつつけたくないと思った。そんな箱入りのお坊ちゃんなのに、冒険をためらわない。清矢くんと出会わなかったら、俺はまだ日ノ本のド田舎で剣術やってる井の中の蛙に過ぎなかったろう。こんな欧州の魔法大学にまでやって来て、魔力選抜一位のルーシャン剣士と技を競ってるなんてさ。

 清矢くんなんてローク神殿の出家たちの世間知らずには真っ向から立ち向かっちゃうし。夜空が持ち出した家宝も手に入れたし。グランドマスターにまで気に入られてる。ピアノも魔法もうまくて、剣だって扱えて、クールなのに俺には可愛くて、ほんと最高に大好き。

 そんなこと考えながら指を絡めた手をにぎにぎしてたら、清矢くんは俺を抱き起こして自分もベッドに横になった。シングルベッドだからかなり狭苦しいけど、恋人とだから密着できて嬉しい。俺も改めて清矢くんの無い乳に思いっきり埋まった。

「なあ、清矢……ここ、吸わせて」
「その前に何があったか話しな。撫で撫でしてやるから一個ずつ」

 そんで俺は早朝からイアソンの掃除当番を代わったことや、ダニールに力負けしてしまったことや、そのせいでテヌーの荷物持ち押し付けられたことや、女子寮に入ってマリアンヌに騒がれて、その後もイアソンの看病してたことなんか愚痴った。一個ずつはたいしたことないけど、ドミノみたいに連続して「不運なお人好し」ってタイトルの絵でも作っちまったみたいだった。清矢くんのシャツのボタン外して、ちゅくって鎖骨吸いつつ、俺はねぎらいと労りの言葉を待ってた。

「詠はイイやつだよな、だいじょーぶ、みんなお前に感謝してるよ……俺はよく分かってるから」

 普段の塩対応からすると嘘みたいな甘い声で俺を慰める。そう言ってくれるって知ってたし、清矢くんはこういうときは絶対俺を刺さない。服をはだけてミルク色の肌を露出させると俺は恥も外聞もなく言った。

「清矢くん、乳首吸わせてくれ」
「ふつーそこまでハッキリ言う? まあいいよ、詠のだから好きにしな」

 俺はもう頭のなかをとろかせながら清矢のそこに顔を突っ込んだ。胸の筋肉の盛り上がりをふにっと堪能しながら、小さな乳首にキス。唇にグミの実みたいな硬さを感じつつ、さらりとした肌に浮いた粒を吸いたてる。本当ならいっぱい感じさせないとダメなんだろーな。そう思いつつも俺は優しい温度と、しっとりなめらかな肌と、すべすべした桃色の綺麗な場所に溺れちまう。

 反対側は手のひらでしきりにさすって。息づかいと共に上下する胸に安心して。ほっぺたを目一杯すり付けて。飴玉溶かすみたいに乳首、吸いついて。ヨミ、ヨミって呼んで、抱き締めてまでくれる。

 やわやわ甘噛みしながら鼻呼吸してせっけんの匂いまでむさぼった。腰のうっすらしたラインまで撫でて、下半身まで擦り付けた。

「せいやくん、好き……!」

 口から求愛をこぼれさせ、太ももに自分の膝を挟み込む。頭の中がしびれてって、獣耳がくすぐったい。全身で好きなやつを抱き枕にしちまった。次の段階がほしくなる。

「ん、せいやくん、もっと……!」

 自分はホントにエッチだなと思う。清矢くんのちっちゃなおしりに手のひら滑らせて、舌先で立ち上がり始めた乳首つついて、色っぽいことしたいって全力で伝えちまった。すると清矢くんは、脚をちょっと動かしながら、するっと腿の辺りを撫でて、そのままもっと奥まったところへ、手を忍ばせてくれた。

「詠、こっち、してあげてもいいか?」

 むず痒いほど恥ずかしい。ちょっと芯が入りかけた股間をやわやわ揉まれた。俺は返事もできずにくんっと腰を振る。ズボンの前をくつろげて、指が根元からゆっくり絡む。俺は胸にぎゅうっと顔面を押し付ける。

「せいやくん、うーっ、はぁっ」
「楽にしてていいから、気持ちよくなることだけ考えな……」

 手を筒にして、上下にきゅっきゅっ。そこはあっという間に充血する。快感が根元から溢れて、腰が突っ張っていく。くしくし、くしくしと清矢くんが俺のちんこをしごいてくれてる。

「くぅ、うー、気持ちい……!」
「底のほうもさらってやるからな~?」

 悪戯っぽい笑みと共に、ふにふにと玉が揉まれた。思わず腰がせりあがって、ちょっと笑われる。

 俺は一生懸命小さな乳首に吸い付いていた。痛くないよう注意しながら噛んだり、じゅっと吸って尖らせたり、口寂しいのをまぎらわせる。

 これはマジで、甘えてるだけだ。自分の弱みを優しい幼なじみに預けて、わずかな脂肪の柔らかさや、しっかりした骨や筋や、弱そうなちっちゃな尖りなんかに溺れてる。身体の前面で清矢のあったかさ、匂い、くすぐったい触感堪能して、敏感なちんこは規則的に擦りあげられてる。

 情けないにもほどがあるけど、俺は心底リラックスしていた。シナモンの香りがちょっとするのは、飲みもの作ってるときに少しかかったのかな。気持ちを散漫に散らしながら、愛撫に身を任せる。

 そうしている間にも、清矢くんの手は優しく俺の中心を包む。硬く浮いた裏筋を押す。先端と茎とのくびれをこする。丁寧に、思わせ振りにマッサージしてくれる。

 ちんこは軽く圧迫されて、だらしなくこぼれた切っ先からの先走りをぬるぬると全体に広げてる。へこみやくびれを指先が通り抜けるたびに、電流でも走るような気持ちよさが通る。

 そのうちいたずらな指は竿を全部握って、もう片方の手は先っぽを覆って、くしゅくしゅと握ったり、くすぐったりし始めた。震えてしまうようなもどかしい快感が脳天までかき回す。俺ははぁはぁ言いながら悶えてしまう。

「はぁっ、あ、せいやくんっ、大好きっ……♥」
「痛くないか? 大丈夫だよな? 詠、かわいいよ……気持ちいいか?」

 一番弱くって恥ずかしくって貪欲なところ、一番好きな人が丁寧に触ってくれてる。シーツと毛布と、大好きなものの間でもぞついて、清矢くんからの畳みかけるようないたわりの言葉を聞いて、俺は弓なりに反った。

「んっ、んんっ、すごくいい、清矢っ……俺、このままイッてい? なあ」
「だいじょぶ、これで受け止めてやるから。全部出しちゃいな……」

 清矢くんはそう言って、綿でできたハンカチを俺の先っぽにかぶせる。布目をじっとり先走りで汚しながら、俺はくいくい腰を振る。清矢くんはためらいもなくなったみたいで、いくぶん強めにきゅっきゅっと手のひらでなぞりあげる。

「くぅぅ♥ 清矢ぁ、それイイ……んっ、んっ、もっとタマもふにふにして……♥」
「ふふ、そだな、この奥のふくれたところ……押したげる」

 俺がねだると、清矢くんは根本の、たぶんタマと竿が体の奥でつながってるちょうど境目のところを、きゅうっと押した。俺はもう全身撃たれたような気持ちよさで、「くあ」ってうめくと、胸に思いきりイヤイヤするように顔面をこすりつけた。清矢くんはよくわかってる速さで手首をかえして、ハンカチかぶせた先っぽは、瓶のふたを開けるようにくいくいっと優しくひねられてる。俺のグツグツしたいやらしい液を、タマの奥から引き出そうとしてくれてる。

「はぁ、はぁ、はあ、ああっ! きもちい、俺、ベトベトにしちゃうよ……!」
「思いっきりヌルヌルにして。詠のせーし、あとで飲んだげるから……!」
「あああっ、清矢っ!」

 なにそれ、もうスゲーいやらしいよ! とめどなく出てしまう先走りがぬらついて、かぶさったハンカチから神経まで直接こするような快感がくる。俺は思わず手をうろつかせて、横寝の状態になってる清矢のかわいいお尻に触れて、操られるみたいにそこをぎゅっとつかんだ。あんまり肉のない清矢のやわらかなところ。すんすん犬みたく胸を嗅ぎまわりながら、腰をくいくい反らせて、濡れてがちがちになった股間だけを清矢の両手に押し付けて、まるで犯してるみたい。気持ちいい、気持ちいいって頭が酸欠みたいにチカチカした。

 親指がちょっとだけリクエストどおりにタマを押すと、今までの快感を引き延ばして遊ぶような動きじゃなく、絶頂まで導こうとしてる本気の動きがきた。

 ハンカチかぶりながら垂直にまで屹立してるちんこを、親指だけ裏筋に当てて、強めに上下にこする。蓋した片手はにぎにぎと丸っこい先っぽを揉む。時折つうっと布目ごしに出口の穴をこすられて、きぃぃんとこめかみにまで快楽が抜ける。

「せいやっ、あっあぅ、それダメだっ、気持ちよすぎ……!」
「痛いか? だいじょぶ? もっとしていい?」
「うううっ、出しちゃう、出しちゃうってば!」
「おっけ、全部、ちょうだい。こぼれないと思う、だいじょぶだよ」
「ぐっ、じ、じゃあ出すぞっ? んっんっ、くうーーんっ♥」

 寛容な返事に気をよくして、手の筒の中にめちゃめちゃに腰を突き入れた。自分からも尻を振りたてて、繊細な亀頭をハンカチの布目と清矢くんのあたたかな手のひらになすりつける。びくびくっ! と震えて、中身の詰まった肉鞘がいななく。

 びゅるるっ、びゅるるっと熱い液塊が勢いよく飛び出して、ハンカチに染みをつくってく。俺は鋭く腰をかくかく動かして、疑似的な種付けの気持ちよさにひたる。どくっ、どくっとうごめくたびに、清矢くんが裏筋をきゅうっと搾ってくれる。そんな技、どこで覚えてきたんだよぉ……♥ 今日のツイてなかったいろんな仕打ちで溜まっちまった鬱屈が、全部チャラになった気がした。下半身で思いっきり力んで、全部出してしまう。ぬらぬらとした液がじゅわっと先っぽを包んだのも恥ずかしくて心地いい。むき出しの先端に布目がざらっと摩擦して、「くううっ」と思わず甲高く鳴いてしまった。突きたてる動きがしだいに緩んで、俺はくったりと脱力してしまう。舌で思いっきり硬くなった乳首舐めながら、沈み込む。

 清矢くんはハンカチの乾いた部分で、器用に俺のものをぬぐった。そうして、倒れこんでいる俺を後目に起き上がって、ベッドにもいちど腰かけた。半眼になって見上げると、清矢くんはにっと色っぽく笑う。

「いっぱい出たなぁ」
「……清矢くん、あんまソレ見ないで」
「恥ずかしい? これからもっと恥ずいことしちゃうんだぜ?」

 清矢くんはそう言って、ハンカチを開いて……中でダマになってる俺の精液にちゅっとキスして、舌を伸ばして少し舐めとっちゃった。紅い唇が濡れて光る。

「そ、そりゃあ、飲んでもらえるのは嬉しいけどさぁ……!」
「引いた?」

 とどめに秋波を送りながらそんな挑発的な問い。射精後でなかったら絶対に押し倒してた。俺は真っ赤になって負け惜しみ言った。

「うーっ、こ、今度はクチん中出すから……♥」
「じゃあ、次も本番なしな。俺もそっちのが気ぃ使わなくていいわ」

 清矢くんはハンカチを大事そうにたたむと、「後はゆっくりしてな」と俺の後ろ頭をなでて、それを洗いに出て行った。取り残された俺は、体温の残るベッドに突っ伏して、そこはかとない恋人の冷ややかで甘い香りの中、ウトウトと寝落ちてく。

 目覚めるともう夕暮れって感じで、帰りは清矢くんがなんと俺を送ってくれた。うれしくってうれしくって、手を繋ぎながらスキップする勢いで歩いた。空が青とピンクに染まって綺麗だ。俺はつないだ手をブンブン振りながら、ついでに尾もガンガン振りながら清矢くんにじゃれつく。

「なあ清矢くん。聖属性塔来たついでにさ、ちょっと俺と調練してかね?」
「えー? もう暗くなっちまうだろ、詠は元気だな」
「もうダニールに負けたくねーんだよ!」

 清矢くんはかわゆらしい目を少し細めて、少し俺を無視った。俺は久々に一緒に遊びたくて、腕まで組んじまう。

 ガキの頃から何度もあったこんな瞬間。ホントにキラキラしてて楽しくて、しかもここじゃあ同性愛の是非はともかく、最初っから公認の恋人同士なのだ。友人、とか幼馴染、とか、どっちの肩書も俺は大事にしてるけど、思いっきりベッタベタしても平気。

 部屋に戻るとイアソンの傍らにはなぜかテヌー・イリアンとマリアンヌがいた。

「あっヨミさんっ、御礼のお菓子ですけど……黒須さん、どうも具合が悪かったんですね、皆さんでいただいちゃいました」
「えっ、あー、分かってたからもう別にいい。マリアンヌまでいたの?」
「殿方の部屋に居座るのもどうかと思いましたけど、私たち、看病してました。奉仕の心はどの宗教でも大切です。私たち、出家ですものね!」

 マリアンヌがシスター服のまま腕組みしてニッと笑う。この娘は金髪碧眼で、目のさえるような美少女だけど、まぁどっちにしろ熱意ある尼さんだ。

 清矢くんは小首をかしげる。

「んー、確かに、出家ですものね。でもイアソン先輩平気?」
「大分よくなったけど、まだ怠いかな」
「暗くなる前にやること色々済ませちまおう。手伝うよ」
「ありがと、ヨミ、セイヤ……マリアンヌもテヌーも戻って。俺、着替えたい」

 俺たちはイアソンの看病を交代して、体を拭くための濡れ布をとってきたり、ベッドメイクをしたり、キッチンでミルク粥作って持ってったりした。イアソンが具合悪いってことはなんでか俺たちの学年全員に伝わったみたいで、途中でアルチュールもオレンジを差し入れてくれたし(ありがたくジュースにして炭酸で割った)、ダニールは冷やすとよくないって毛皮の防寒帽を貸してくれた。

「みんな何だかんだで優しいじゃん?」

 清矢くんはそう言って俺を見やる。その通りで、一人でひがんでたことを反省しちまう。しゅん、と獣耳を折れさせると、清矢くんははむっと歯を立てずにそこを噛んできた。

「……詠が一番、いいやつだよ。俺はわかってる」
「へへ。俺が大変なときは清矢、いつでも来てくれよな」
「こんな遠くまで引っ張ってきちゃったんだもん、超大事にするよ♥」

 清矢くんはそう言いきって、屈託なく笑った。俺はその笑顔だけで躍り上がるほどうれしくなって、イアソンいるのにぎゅうっと抱きついちまった。清矢くんは笑いながら俺の獣耳を撫で撫でする。俺はやにさがった声で言った。

「なぁ~、清矢くん。明日は一緒に調練しようぜ。その後なんかして遊ぼう?」
「んー、もっかい、昼間みたいにイイ子イイ子してやろっか?」

 二人きりの秘密を暴露された俺は瞬間的に赤くなって、ブンブン首を横に振った。

「ちげー! な、なんかもうちょい恋人らしいこと!」

 清矢くんはにんまりと裏がありそうに笑う。イアソンも眼鏡かけながら苦笑してる。

 ……ホント、アルカディアまでついて来てよかったよ。数年も離れ離れなんて絶対耐え切れなかった。日常のちょっとした落ち込みだって、清矢くんは受け流したりなだめすかしたりして、俺を大事にしてくれる。

 明日は恋人らしいこと何しよう? こんな甘いお誘いはない。俺はベッドに勢いよく座り込んで、足をぱたぱた床に打ち付けながら、楽しい楽しい明日の計画をはじめた。

(了)

※この短編は独立した軸としてお楽しみください