First aid Panic!
1
アルカディア国、クラブ『カメレオンのための音楽』にて。ゆるくダンスミュージックがかかる暗がりの中、恋人兼親友兼相棒の清矢くんがカクテル片手に質問してきた。
「そーいや、
酔ってんな、って思った。日本語だから一緒に来てる他のやつらには分かんねぇだろうけど。マゼンタピンクやシアンのライトが駆け巡る中、俺はコーヒーリキュールちびちびやりつつテキトーに答えた。
「俺には変な趣味なんてねぇ」
「フェティシズム。物神崇拝。例えば女そのものよりも脚とかのパーツだけに惹かれるとか。詠も一個くらいはあるだろ?」
「ないよ。俺そんなにヘンタイじゃねーもん。清矢くんそのものよりも脚だけに惹かれるとかありえねーし。じゃあ清矢くんはメガネのほうが俺より大事なのかよ」
「ったく、つれないなぁ。おやさしい恋人の清矢サマが一個くらいは叶えてあげようとしてるんじゃん」
「それ、トモダチの前で堂々と言えるなら清矢ってスゲー。俺は絶対、ヤダからな」
きっぱりそう言ってつんとそっぽを向いた。清矢くんはやがてドリスとかエミーリアに呼ばれてそっちに行ってしまった。俺はナンパから戻ってきた充希に悪乗りを言いつけてやった。
充希はあんまり戦果がよくなかったみたいで、自棄でジントニック流し込んで言った。
「清矢くんが? 何かしてくれるなら? やっぱ女装っしょ。詠ちゃんも一度は見てみたいって思わないの?」
俺はちょっと想像してみた。
でも、『不思議の国のアリス』の挿絵みたいなエプロンドレス姿しか思い浮かばず、かわいいかもって思ったけど、エロいかって言うと微妙だった。清矢くんはそのうちフラフラと一人で戻ってきて、モヒートを口に含んで俺にとっぷりキスをした。
「んー、詠、口移し♥」
「っ、ぷはっ、せ、清矢っ。いきなり刺激強えよ! 外行くぞ、酔い覚ませ!」
唇と舌を合わせれば、ミントフレーバーの強い酒がついでとばかりに流し込まれる。俺は白黒しながら飲み干した。ぽすっと背中を叩いて、清矢くんをホールから連れ出す。廊下には同じようなカップルが列をなしていたので、俺は店を出た。飲み屋の通りを歩き、声かけてくる商売女なんかを袖にして、生ぬるい三月末の空気の中を歩く。
欧州の中でも海に近いこの国は、そろそろ稼ぎ時だ。何よりアルカディア魔法大の入学試験がある。遠方の国からなら一か月程度かかっちまうから、受験だけでも大事だ。俺たちは日本国の国策だからここにいられる。今夜は一年次修了のお祝い飲みで、キャンベル・ヘクタグラムカース・プルート主催の大がかりなパーティだった。なんとか一つも単位を落とさずに済んで、俺は心底ホっとしてる。
ポケットに手を突っ込んで寮への帰り道を急ぎながら、俺はためしに言ってみた。
「清矢くん、フェチっつーなら女装とかどう? たぶん、似合うと思うけど」
「はぁ? 女装?」
清矢くんはきっと俺をにらんだ。釣り目がますますきつくなる。黒いレイヤーショートに、白い肌。大きなつり目の上にはスッと優美な眉毛があって、紅い唇も色っぽい。元・宮家という家柄の由緒正しい御曹司サマは、間違いなくお母さん似で、細身で品があって、生臭い男らしさとは無縁だった。
ガス灯のライトが鈍く光る路地。人波の中ひとり突っ立って、清矢くんは言った。
「詠は俺が女じゃねーとヤダ?」
俺は振り返って慌てて取りつくろおうとした。清矢くんは、左肩に右手を、右の腰に左手を、腕をクロスさせて自分を抱きしめながら、冷たい目で俺を見くだした。
「詠にドキドキするこの胸も、詠のこと欲しくて硬くなるアレも、詠のことだけ受け入れたくて準備してくるお尻も、みんな女には敵わねーんだ?」
地雷踏んじまったって気づいた。観光客や地元の遊び人たちが笑いながら行き交う路地で、いきなり際どいことばを投げかけられた俺は、石畳に黒く影を落として挑発してくる恋人に、馬鹿みたいにしか答えられなかった。
「ちげぇよ、ゴメン、清矢くん……!」
「俺は男なの。男として詠とヤリたいの。女の代用品でしかないなら……詠の性欲なんかいらない」
清矢くんはそう言いきって、俺を追い抜いて歩き始めた。俺は違うよ違うよって焦りながら言い訳したけど、王子様の末裔の機嫌は直らない。
お疲れ飲みから数日経って、俺たち『ゴント山へ行こう』サークルの一年生たちは、魔物がたむろす神山に登り納めをしてた。顔ぶれは打って変わって真面目な男子中心だ。ノヴェッラ修道院出身の強面修道士、パウロ・ギッティとか、ゴント山番の息子のオルク・ジェド・アースシーとか、毒沼契約のダミアン・クラークとか。女の子は船乗り志願のアシュリーだけ。清矢くんも先日のいさかいなんて話題にもせず参加してる。
俺は常春殿神兵隊の黒い鎧と装束で、清矢くんのお祖父ちゃんが使ってた黒燿剣っていう大剣を持った。黒装束の時は襟巻きをする。動作にあわせてたなびくそれが、今日はちょっとうっとうしい。清矢くんがあれ以来、恋人らしくじゃれてくれないので、濡れ鼠になった気持ちだった。
清矢くんは軍閥の人が張り切ってデザインした戦衣のコートを羽織ってた。真円の右舷を少し太らせた新月紋が背中に染め抜かれた、白のロングコート。黒いバンドがあちこちに着いていて、立て襟がお洒落だ。軍用ハーモニカ専用のポケットがあったりする特別製。
左手には家紋入りマンゴーシュ。右手は神兵隊の直剣で、敵の攻撃をいなしつつ躊躇なく斬る。魔法で翻弄する。剣技で魅せる。白い裾をはためかせて魔物に相対する様は、どこまでも冷徹でカッコいい。
「
ゴント山五層。火属性の敵だけが生息するその地に、清矢くんの高らかな掛け声とともに銀の魔法の雨が降る。退魔の力がこもった針の雨が前方三メートル幅を直進し、魔物を惨殺する。これは日ノ本で埋め込んできた固有術。魔方陣も汎用系には翻訳できない。
「セイヤ、俺ブリザード行く! 前衛お願い!」
水属性のダミアンはここが活躍の場だ。炎髪を揺らす女の悪魔やら、炎ブレスを吐く野獣とかをまとめて祓おうと、範囲魔法の詠唱をはじめる。火属性の俺はとりたてて有効な攻撃術がないから、ファイアーウォールしてダミアンの詠唱の隙を稼ごうとした。
清矢くんとの連携がその時崩れた。清矢くんは防御魔法で耐えずに、ダミアンの指示どおりあくまで剣技で立ち向かうつもりだったっぽくて、魔物の群れにまっすぐ駆けてった。
――露払いの驟雨にさんざ撃たれた魔物が、怒り狂って咆哮した。
その怒りに応じるように、黒い業火の渦がブーツの足元をすくうように顎を開く。
「だっ、清矢くんっ危ねぇっ!」
俺は横ざまにタックルして清矢くんの突撃を止めた。二人そろって丸腰で魔物の眼前に倒れこむという最悪な状況を招いたと分かったのは体がとっさに動いた後。
「永遠なる氷よ非情に吹雪け! 『ブリザード』!」
焦ったダミアンの声がした。吹雪に体を包まれて、俺はぎゅっと清矢くんの肩を抱いていた。反属性の魔素にかき消されながらもなおも伸びるフレイムヴァンプの火の爪が、俺の横腹を引き裂いていく。支援役のパウロが剛健な声で「ハイネスヒール!」と叫んだ。癒しの加護が傷を治すが、明らかにピンチだった。
「や、ヤバかった……! 詠唱間に合ってよかった……」
ナビ役のオルクが天を仰ぐ。アシュリーは援軍がいないか周囲を見回して、叫んだ。
「前衛二人、大丈夫!? どっちかあたしが変わろっか!?」
弱虫風に吹かれてた俺はアシュリーに清矢くんと変わってもらおうと思った。
でも清矢くんは少しくらいの誤算なんか、蹴りやぶる勢いの士気だった。
「アシュリー、できれば前へ来てくれ! 水属性でガンガン行こうぜ!」
「オッケ、三枚前衛ってことだね? このぶんなら五層は越えられそうだよ!」
勇んだアシュリーがカットラスを構える。
終わってみれば五層の門番魔まで倒すっていう大戦果で、帰投後は戦利品を売り払うついでにみんなで飲みに出た。今度の店は普通の大衆食堂だ。麦酒をジョッキであおりながら、俺は清矢くんをほめた。
「やっぱ俺、カッコよくて頼りになる清矢くんに惚れてる」
酔いもまかせて簡単に言えた。清矢くんはシーフードドリア食いながらちらりと俺を見た。
「そっか。あのさ……今夜、『海鳥亭』泊まらね?」
それはちょっと本格的なレストランがやってる民宿の名だった。分け前のおかげで懐もあったまってたから、俺は迷わずオッケーした。
2
『海鳥亭』のツインの部屋は、カーペット敷きでシャワーがついてる。ギリギリオフシーズンだったから当日でも部屋は空いてた。戦衣のままなだれ込んで、清矢くんは先にシャワー浴びてくるって個室に入った。出てきてからは交代して、バスローブだけになった俺は清矢くんのこといっぱい抱いてやろうと決然とした気持ちでいた。
清矢くんはまだ濡れ髪で、戦衣を着なおしてた。俺がダブルベッドに座って手を握ると、鎧のインナーのボタンをそっとはずし始めた。
グレーのシャツがはだけられると、清矢くんは胸元を見せてきた。胸筋の盛り上がった頂点には、なぜか絆創膏が貼られてた。俺はなんか照れてしまって……清矢のそこに手を差し込んで、温かみを感じつつ撫でた。
「詠、俺の胸好きだろ? これ貼るとフェチくってイイかなと思って……」
「怪我とかじゃなかったのか? なんで、綺麗な乳首隠しちまうんだよ……!」
清矢くんはちょっと気まずそうな顔して襟元をかきあわせた。
「まぁ、詠は俺よか変態じゃないもんな。女が好きでもしょうがねえ」
俺は清矢くんの両肩をつかんで、ベッドに力任せに押し倒した。黒水晶みたいなちょっとけぶった瞳をまっすぐ見つめながら説得する。
「俺が好きなのは清矢くんだ、女なんかじゃねぇ!」
啖呵切って返事も待たずに、インナーを剥ぎ取って胸元に顔を埋めた。絆創膏越しにちゅぱちゅぱ乳首を吸って、ふやかしてやろうとした。清矢くんは焦りぎみだ。
「よ、詠……! くっ、はぁ、や、やめろよ」
「ん、ん、止めねぇ……! 俺、ココ吸うの好きなのに……!」
そう言ってかりりと絆創膏ごと乳首を噛んじまった。清矢くんが雷撃にでも撃たれたように「ひああっ!」とのけぞる。右の乳首は撫でたり擦ったり、左の乳首には口で甘えつく。裸の胸を抱え込んで、俺は熱心に熱心に隠れた乳首を愛しまくった。
唾液でベトベトになった絆創膏をぺりりと剥がして、現れた清矢くんの乳首を見る。ピーチベージュの乳輪に浮くちっちゃな尖り。ポトリと絵の具を落としたような、慎ましい大きさのそこ。見てるだけで幸せになっちまって俺はぎゅうっと胴に抱きついた。しなやかな骨と、筋肉が確かな強さで俺を受け止める。浮き出た鎖骨のカーブを唇でなぞって、手のひらで胸を揉みしだく。撫で回す。乳首を指の股ではさんでしまう。頬を寄せあい、首の後ろに左腕を回して、腕枕しながらぴったりと密着した。
肌は滑らかで、シャワーの後でさっぱりとした水気がある。添い伏せる形になって、俺はいよいよ唇に唇を合わせて奪いながら、右膝をくっきりと相手の股間にあてがい、下になった左足の爪先では清矢くんの足の甲を撫でた。
引き締まった全身で相棒を包み込んでやると、庇護欲がこれ以上なく満たされる。
どこもかしこも綺麗な清矢を正しく愛でてやってるっていう優越感もある。
二人のあいだに、今だけは何の邪魔もない。
脇腹から腰骨まで横のラインを撫で下ろすと、甘えがにじんだ声で清矢くんが「よみ……」って俺を呼んだ。俺は眉毛やら、まぶたやら、鼻のあたまなんかにちゅ、ちゅ、ってキスしてやる。肩を撫でたり腕をつかんだり、クンクンって匂い、嗅いだり。
大好きなやつとそんな風に抱きあってるんだから、股間はキィンって張ってきてた。押し付けると清矢くんのも硬くなってた。俺は体勢を変えて、ずり下がって行った。
「清矢くん、勃ってる」
「あのさ……詠……」
清矢くんがおずおずと口ごもって、コートのポケットをいじる。ローションか何かかなと思ったけど、つまみ出されたのはカーマインレッドに金の縁取りがあるリボンだった。
「詠を不安にさせちまった俺へのお仕置きに、そこ縛ってみる……?」
俺は困惑しながら受け取って、中途半端に下履きを脱がせた。斜めにたってる男の証を両手で包んで、ちゅっと切っ先にキスする。
清矢くんがそう言うから、ちゅむちゅむキスしてやりながら根元をリボンで縛ってみた。でも緩くだ。蝶結びにしたから、おめかしさせたみたいで何かいけない気持ちになる。ぷっくらと膨らんだ亀頭を口に含んでやって、唾液に浸らせてやる。根元をリボンごと上下にしごくと、男根はあっという間に膨れあがってかたちも鋭くなった。
「ん、よ、詠……! ん、はあッ、うっ、くうーっ!」
先っぽを口に含んで舌で支えてやりながら、茎をごしごしするのはさすが効いた。
芯が入ったそこは燃えるように熱い。唇をすぼめて、割れ目に舌を這わせつつ唾液ごとじゅって吸ってやった。
「あっ、詠、っくっ……はあッ」
清矢くんは苦しげなあえぎを漏らして、そこをひくつかせた。いつものクールな建前を崩せたようでちょっと得意だ。緩やかに左にカーブしたちんこは、先っちょの粘膜が濃いルビー色。茎も親指と人差し指で作る輪っかの太さでちょうどいい。何より硬くってピンと伸びをしてて、体の中の熱さまでにじみ出てるのが、健気だ。
「清矢のここ好きだよ」
俺とおんなじに、好きなやつに硬くなって、熱い気持ち吐き出す男のものが好きだ。俺は頬擦りまでしてやって、頑張って全てを口で咥えた。粘膜をぺたりと性器のかたちに張り付かせて、じゅっじゅっと吸い付き、舌で裏筋をしごく。強烈すぎる快感で、うっすい腰がひきつって浮く。
「んっ、んっ……! よみ、よみ、んん、あはァッ……! はっ、はあっ、あああ……!」
俺はギリギリまで追い込んでから口を外し、ニッて笑ってトドメの一言をささやいた。
「俺に清矢の大事な種、ちょうだい」
「う、ううっ、いっぱい出すからっ……!」
リボンごとくしゅって握って、その手をこすこす上下させて、ベロ出して先っぽをぺろぺろ舐めてやる。ハイスピードな仕上げに、肉棒はどんどん膨れ上がって、しまいにはビクビクッ! と震えた。その痙攣にあわせて勢いよく白い紐が打ち上がる。顎をのけぞらせ、腰を突きだして、腿にまで力入れて、清矢くんが射精。
「はぁっ、ああ、よみっ、よみ好きっ」
俺は顔を横切る子種をぬぐう。先っちょに吸い付いて口のなかに残りのドロドロを溜め、こくんっと生ぬるい液を飲み干す。
リボンをはずして、小指を縛る。清矢くんの小指にもきゅって結びつけて、俺は満足した。運命の赤い紐ってやつだ。
「こっちのがもっと素敵だろ」
清矢くんは頭傾けてそれを見て、物憂げだった。
「……やっぱり俺のが変態みたい」
俺は答えずに、清矢くんの片足を折り曲げてお尻を覗き込んだ。割れ目の奥には、洗われてぬらついた孔。ぷりっと丸い睾丸も愛らしい。俺はリュックの中からクリームを出して、人差し指にたっぷりとすくい、すぼまった穴に塗り込み始めた。入り口のひだをのばすように、次第に中へ、じっくりと。するりと指が入り込み、清矢くんが腰を細かく上下させる。互いに何も言わない。密やかな前技だ。そのうちお尻の孔は緩く口を開く。充血して紅く染まってくる。
指をぐっぷり三本嵌め込んで、俺は命じた。
「清矢くん、俺の上で動いて欲しい……♥️」
清矢くんはこくりとうなずいて、慎重に、リボンがほどけないように動き、仰向けの俺にまたがると、もう堪らないってくらいギチギチになってる勃起したあれをお尻でくわえこんでくれた。
入り口のきつい輪が強く先端を刺激する。むっちりした亀頭が括約筋を通りすぎると、体重に任せてずるッ、と一気に潜り込んでしまった。
「うっくっ……! よみっ、きつ……!」
「はっあ、せ、清矢ぁ……♥️ あったけぇよ、スゲー気持ちい……!」
じゅわっ、と口から先走りが滲むのすらわかってしまう。幹も先っぽも一息にぬらつく肉穴に呑まれて、俺はひくつきながらこらえた。よく締まる入口がきゅう、きゅうって俺の根元に甘えてくる。可愛くってくんっと突けば、柔らかい腸壁がちんこをねぶる。脊髄を直接ぺろぺろ舐めあげられてるような露骨な快感。うねる中をくいくい擦って、少し顔を上げれば、清矢くんが裸で俺にまたがってる。白い石英みたいなきらきらした肌も、少し割れた腹筋も、なだらかな胸や、骨っぽい肘の柔らかそうな裏側なんかもバッチリ見える。黒髪はちょっと乱れて額に張り付いてて、形のいい眉は苦しそうにひそめられてる。スモーキーな瞳は色っぽく濡れて、いつもは見られないような泣きだしそうな、愛しい表情だ。
引き締まったお腹のあたり、へその凹みをじろじろ見ながら、俺は腰を突き上げた。そのたびに清矢くんが派手に震えて、お尻をきゅうっと締め付けてくる。
俺は目を細めて絶景を堪能する。
両手をラブラブで握り合って、感じて乱れる清矢くんを高揚しながら見上げてる。
「んっ、ひうっ、はっアッ、よみ、よみっ、おっきいよ、おれっ、中から押されてイっちゃいそ……!」
「清矢っ、清矢っ、好きに動いていいからっ……♥」
そう言ってちょっと腰、引いてやる。清矢くんは浅いトコ好きだからだ。案の定、ちょっと腰浮かせてぷっくら充血した前立腺に、俺のゴリゴリの先っぽを当ててる。力が抜けちゃうほどイイっぽくて、すぐに俺の鼠径部の上に座り込んじまう。俺はもちろん、深い奥が好きだから……へたった清矢くんを攻め立てる。狭まるところにとちゅとちゅってキスした後、ぐいっぐいっと前後に動く。お腹の奥をなぶられた清矢くんはくたっと猫背になっちまう。
「よみっ、おれ、無理っ……! そこ、腹の奥にズゥンってきちまうよぅっ……! あっ、あぅっ、あああっ」
「ん、清矢のいいトコはもうちょっと手前だなっ……♥ 擦ってやるからっ」
「だ、ダメッ、イっちゃうだろっ、ヤだよ、お尻だけでしゃせーしちゃうの……!」
「もっかいイこうな、清矢っ♥」
俺は調子づいてそう言って、清矢くんのウエストをぐっと掴んで、持ち上げ気味にぐいぐいと極点を責め上げた。最後にわざと奥までずるりっと潜り込ませると、清矢くんは刺激で絶頂した。
「ひぁあっ、ふあああっ、くッ、あ、ダメだっ、イっちゃう、よみぃ……!」
びゅっびゅっと水栓のような激しさで、清矢くんがザーメンをまき散らす。
白い液塊が俺の腹や胸にかかっちまうけど、中だけでイカせた満足をさらに煽っただけだった。
男の無防備で可愛い絶頂、頭のてっぺんから性器のいななきまで全部見せてくれた相棒に、俺は感謝でいっぱいだった。
ひくつく中を堪能しつつ、トントンと奥を小突いて頭とろかせて、俺もこってり出す。
「清矢っ……! 俺のも、全部、呑んでくれよっ……♥」
「はっ、ふぁ、ああー……よみの、あっつい……」
どぴゅどぴゅっ、と音がしそうなくらいに、圧倒的な快感の波が性器を通り抜けてく。背骨からジンジンと頭までしびれさせて、好きって気持ちをじゅっじゅっと中に焼きつけてやる。清矢くんも殊勝に目ぇつぶって俺の精液を受ける。思いっきり力をこめて、底に溜まってた分までぜんぶ、ぜんぶ、注いでしまう。
最後のひとしずくを吐き出した後も俺はまだまだ燃えていた。上半身をくずおれさせた清矢くんに、二回戦めをおねだりする。
「なぁ、清矢……俺、今度は抱き合ってしたい」
「ん、ちょっと休ませて……そしたらラブラブなセックスもっかいしよ」
互いに若いし、精力もギンギンだ。ふにゃふにゃにとろけながらもいつも通りの強気なまなざしで笑ってくれた清矢くんが、愛しくてたまらない。
3
翌日、俺は近づいてきた帰国に備えて荷造りを始めてた。ガチャっと寮部屋のドアが開いて、清矢くんが顔を出す。同室の友達はちょうどどっかに出掛けてた。
「詠、今日も遊びに行かねぇ?」
清矢くんは俺のベッドに腰かけて、挑発的に微笑みつつ、ノーカラーシャツのボタンをいくつか外した。
ぐいっと胸をさらけ出して……乳首の上にはバッチリ、絆創膏が貼られてた。俺は速攻で赤くなり、清矢くんの襟元を直した。
「やめろよ、他のやつに見られたらどーすんだよっ!」
「へへ。まさかの俺がハマっちゃったみたい。詠ー、またお口で優しく剥がして♥️」
清矢くんは猫っかぶりしてあざとくペロッて俺の頬をなめた。俺はたまらずぎゅっと清矢くんを抱きしめた。
そんで、熱い告白した。
「フェチで変態な清矢の面倒、俺が一生見てやるから……!」
「はぁ? そんな言い方ねーだろ! 詠だって胸吸い大好きなくせにさぁ!」
俺は減らず口たたく唇をキスでふさいだ。息せず舌を絡ませ続けて、互いに限界きて離れては火がついたみたいに笑う。
目と目が合って、もう一回とっぷりとキス。言葉を交わさなくてもタイミングはバッチリだ。
憧れのヒーローの孫の、クールでかっこいい清矢くん。俺はいつだって、一番そばにいるこいつに夢中だ。
(了)
※この短編は独立した軸としてお楽しみください