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あおうま
#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #[詠×清矢]
 お題:「雑誌」「モデル」
櫻庭詠×祈月清矢(Arcadia Magic Academy Ver.)
12/02 21:02-21:43

 金曜は同室の黒須イアソンが全コマ授業の日で、俺は餌付けかよって思いながらもガムとかロリポップとかジュースとか、ともかくしゅわしゅわ甘いものを用意して、あとは念のため、一応念のためにハンドクリームの残量を確認して部屋もばっちり掃除した。四限が終わると俺は清矢くんを誘った。
「なあなあ清矢くん。この後俺の部屋で一緒に勉強しよーぜ」
「勉強? 下半身使ったやつは聖属性塔ではごめんだぞ」
「ちげー。そんなことしねー。イアソンにチクられたら俺、退寮だし」
「そういや俺も詠《よみ》に試したいことがあるんだよな。ちょっと待ってな。時間足りるといいけど」
 清矢くんはそう言ってにんまり笑うと、充希といっしょに風属性塔まで戻ってった。せっかくの二人きりになるチャンスだってのに、充希まで来たらヤダなぁって俺は心の中で泣いた。
 清矢くんとの恋は、アルカディア大に来てからそんなんばっかだ。せっかくカラダで結ばれたのに、清矢くんはセックスを渋ってばっかり。日ノ本にいたころとは違ってゲイバレ気にせずイチャイチャして、恋人だって公言できるのはいいけど、肝心な恋人時間が足りない。
 いじけながら待ってると、清矢くんが部屋に直接やってきた。プラスチック製の何かカラフルなトイカメラを持ってきてる。神威研究室に置いてあったやつパクってきたんだ、なんて恐ろしーことを平気で言う。俺の恋人は見た目どおりの優等生サマだけど、単なる柔和なイイ子ちゃんではない。そんなら好きにはなってねーけど。そんで、含みのある色っぽい笑顔で俺に言った。
「なぁ、詠。エッチな写真とろーぜ」
「は? 今なんて言った?」
「詠は服はまだしも身体だけは鍛えてるじゃん? だから色っぽい写真が欲しい」
 清矢くんは相変わらずちょっと意地悪な言葉で俺を刺した。故郷で雑誌見てたら「ファッションファイターヨミ」って笑いだしたのを思い出す。そんなにダサくねーよ! 清矢くんに言われてからは、雑誌に載ってるモテファッションと同じデザインそのまま買うようにしたし。それがまたビミョーに似合ってないとか口出してきて、そんで最終的には「どんなにダサくても詠が好き♥ 愛してるぞー」とか言って上手くごまかしたつもりでいやがるから本当にムカつく。エッチできるようになってからは俺が攻め手だから少しは溜飲も下がるかと思いきや、「場所がない。バレたら退寮」の一点張りだ。
 俺の清矢サマはお母さん似の古風なうつくしー美少年顔で悪い悪い遊びを提案する。
「さ、上半身脱いで。俺のオカズにしてやるから♥」
「や、やめろよ。だいたいどうやって現像すんだよ」
「これ、撮ったはしからプリントするやつだから二、三枚ならバレねーよ。欲しいなー、詠の半裸写真」
 早くしないとイアソン帰ってくるぞみたいな脅しかけられて、俺はしぶしぶトレーナーと中に着てたカットソーを脱いだ。アルカディア大に着た後も毎日剣術の鍛錬と身体づくりはしてるから、何の恥もないはずだ。腹筋も割れてるし。清矢くんはちょっと悔し気にふふんと笑う。
「やっぱ詠はハダカのほうがいい男っつーか、フルヌードはさすがにやばいな。さーて、小道具小道具」
「小道具って何だよ!」
「なにこれ。食べようと思ってたの? じゃあ剥いたげるから、あーんして」
 ロリポップの包装紙をはがして、どぎつく赤い飴玉を、俺の唇に押し当てた。俺は敗北感にまみれながらそれをあむっと咥えて、指示どおりにベッドに寝転んで、なめた。
「もっとヤらしくペロペロして。乳首舐めてるみたいに♥」
「……清矢くん。変にエロいこと言うなよな」
「ちょっと飴に歯立ててみて。そうそう、いいよ詠~。ワイルドにいこーぜ」
 清矢くんはセミヌードの俺にレンズを向けながら呑気にそんなことを言う。俺はどうしてもうまくノリきることができずに、動きはぎこちない。
「目線こっちこっち。ポーズ取ってみなよ、モデルみたいに」
「誰かに見られちゃったらどーすんだよ。俺やだよ、こんな写真とるの」
「……じゃあ、詠も俺の好きなとこ撮っていいから。詠の大好きなハメ撮りだってオッケーだぜ? 局部写真も。それに比べたら断然、大人しいだろ」
 口ではそう言ってるけどぜってーオッケーしねーくせに。
 あと、そんな写真べつに俺は大好きじゃない。た、多分。大体何に使うんだよ、局部写真なんて! セックスのとき見せつけて言葉責めするくらいしか用途が思いつかない。「なぁ清矢、お前のお尻、今こんなになっちゃってるんだよ」的な? さすがにそれは変態すぎるだろ。終わった後口きいてもらえなさそう。あとオナニーのときにオカズにするとか? 空しすぎ。だいたい誰かに盗み見られたらって思うとそれだけで全身の産毛が逆立つ。清矢くんは、エッチの時だけは、俺だけのカワイーお雛様になる。それを堪能するのは俺だけの特権であり、他人に見せびらかすモノじゃない。
 色々考えちゃってむっつり飴玉くわえてると、待ちきれなかったのか清矢くんがパシャっと音たてて写真をとった。カメラから吐き出されたフィルムの中で、半裸の俺のふてくされた表情が感光して徐々に像を結ぶ。俺たちは些事を忘れて写真を観察した。
「うーん、ワイルドウルフって感じ。ちょっとピントボケてるかな。じゃ、詠も撮っていーよ、俺の痴態」
「痴態はちょっと……ヤバすぎない? 流出とか考えるじゃん」
「そんなこと、詠がやるわけねーだろ、信用してる。それとも健全なのにする? 清矢サマのとびっきりのアイドルスマイルくれてやるぜ?」
「……じゃあ、ローブも下もぜんぶ脱いで、俺のベッドに寝転んで」
 ……これってやっぱり『ハメ撮り』だよなぁとか思いながら、全裸になった清矢くんの、挑戦的な表情とピンクの乳首をわざわざ、寮のベッド背景で撮っちゃう。ファインダーごしに俺の舐めてたロリポップにキスしてる清矢くんは期待どおりエロかった。オパールみたいにきらきら真っ白な肌。つややかな黒髪に、ぽってり紅いクチビル。絶対フェラの暗喩に違いないちょっとだけ曲げられた舌先。見てる人の欲情をあざわらうみたいな余裕ある笑み。俺は愚かな犬みたいに股間をきちきちにしながらインスタントカメラで恋人を撮る。……ここ、聖属性塔だぞ。聖職者宿舎。『みだらな行為』は当たり前に禁止事項。何重もの冒涜でじっとり興奮が沁みてくる。
「詠の分はオッケ?」
「……うん。なぁ清矢くん」
「これで充分だよなぁ、じゃあ服着よ。最後にツーショット撮ろうぜ」
 そんな生ぬるい逃げ方ゆるさない、って思った。俺はあつらえられた据え膳をベッドに押しつぶして、ひどく乱暴なキスを始めた。(了)