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あおうま
小川一水『時砂の王』ハヤカワ文庫JA

二五九八年、人類はETと呼ばれる敵性体に地球を壊滅させられ、海王星惑星トリトンまで退却していた。戦況は好調に転じていたが、敵は時間遡行を行い、歴史改変を行って人類の根絶を図った。すぐれた人工肉体と知性をそなえたメッセンジャーは未来からの援軍として、人類の歴史の各時点にタイムワープを行い、ETと戦う運命を担う。メッセンジャー・オーヴィルが長い苦闘の末に降り立ったのは、卑弥呼が祭祀政治をつとめる古代日本だった。

目的の不明な地球外生命体の群体と戦う戦記もので、タイムトラベル要素が特殊。とくに古代日本の卑弥呼(彌与)の意識と未来人オーヴィルの意識が地続きの文体で描かれているのがユーモラス。
戦線は膨大で、かつ古代が舞台なので臨場感もある。オーヴィルの最愛がずっとトリトンで出会ったサヤカのままなのがよく分からんw 人類に対する忠誠心を行動の指針にするという彼女自身は、けっこう磊落な人に思えるのも何かしっくりとこない。単に魅力的な女だったっていうだけの話じゃ…とあんまりノレない。
もう一人のヒロイン卑弥呼(彌与)は、ずっと祭祀政治の駒としての自覚しかなかった受動的な女だが、絶望的な状況に至るラストでようやく為政者としての自覚が芽生える。それはサヤカよりも熟しておらず、オーヴィルにとっては協力者のひとりで、内心を任せ合うパートナーには成りえなかったってことなのかな。統合知性体カッティ・サークが無機物萌えとしてけっこう可愛く感じられるw
ラストもなー、ナンパで終わりっすか、って感じがちょっと肩透かしかもしれない……
色々言ったが読んでる最中は面白かった。この作家の文体が好きなので、もう少し読むかも。

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