あおうま
山田詠美著『ベッドタイムアイズ・指の戯れ・ジェシーの背骨』新潮文庫
これは著者のデビュー近辺の作品を集めた短編集。なんと解説は浅田彰である!豪華!
読んだことがある作品なので、このところの十冊小説読破運動に数えるのは躊躇したが、
ほとんど忘れているのでまぁいいかと。
読み返してみると、やっぱり性描写はきつい。だがいわゆるポルノグラフィかというと違う。
ポルノグラフィとは自慰のための誇張された官能描写だが、今時これでヌケるヒトはいないだろう。
あっさりと男女が性的魅力ほのめかしだけで繋がり、その後動物のように本能だけの日常を過ごして、唐突に別れる。『ベッドタイムアイズ』と『指の戯れ』はそういう話だが、感覚を切り取ったような描写なので不思議と生臭くない。となると、じゃあ生臭くするにはどこを誇張すべきか? という部分まで思いが流れる。
私は思い出をいとおしんでいる! 思い出という言葉を! 私には全く関係のなかった意味のない言葉。私は記憶喪失の天才であったはずなのに。初めて私自身に所有物ができてしまったのだ。
快楽とマゾヒズムが滲む刹那的な恋愛のショートフィルム。作者がそれだけでないのを示すのが『ジェシーの背骨』。これはバツイチ子持ちの黒人リックと恋仲になったパーリー系女子・ココが彼の息子ジェシーと何とかうまくやろうとする話なのだが、この頃からすでに子供を書く筆致はすばらしい。けっして馬鹿でなく、たんなる無垢ではなく、憎しみと不満でいっぱいで、平気で人を傷つけるし、そのわりに感情の表出がダイレクト。二人は結局、言葉なんかじゃわかり合わない。
さて性愛がなければどうやって二人はお互いを認め合うのか。動物的なやりとりは、原始人でもわかるだけに強い。この短編の続編である『トラッシュ』も読んだ気はするが例によってかなり忘れている。ジェシーとココの日常の続きがみたいので、読むリストに入れたい気がしてくる。
これは著者のデビュー近辺の作品を集めた短編集。なんと解説は浅田彰である!豪華!
読んだことがある作品なので、このところの十冊小説読破運動に数えるのは躊躇したが、
ほとんど忘れているのでまぁいいかと。
読み返してみると、やっぱり性描写はきつい。だがいわゆるポルノグラフィかというと違う。
ポルノグラフィとは自慰のための誇張された官能描写だが、今時これでヌケるヒトはいないだろう。
あっさりと男女が性的魅力ほのめかしだけで繋がり、その後動物のように本能だけの日常を過ごして、唐突に別れる。『ベッドタイムアイズ』と『指の戯れ』はそういう話だが、感覚を切り取ったような描写なので不思議と生臭くない。となると、じゃあ生臭くするにはどこを誇張すべきか? という部分まで思いが流れる。
快楽とマゾヒズムが滲む刹那的な恋愛のショートフィルム。作者がそれだけでないのを示すのが『ジェシーの背骨』。これはバツイチ子持ちの黒人リックと恋仲になったパーリー系女子・ココが彼の息子ジェシーと何とかうまくやろうとする話なのだが、この頃からすでに子供を書く筆致はすばらしい。けっして馬鹿でなく、たんなる無垢ではなく、憎しみと不満でいっぱいで、平気で人を傷つけるし、そのわりに感情の表出がダイレクト。二人は結局、言葉なんかじゃわかり合わない。
さて性愛がなければどうやって二人はお互いを認め合うのか。動物的なやりとりは、原始人でもわかるだけに強い。この短編の続編である『トラッシュ』も読んだ気はするが例によってかなり忘れている。ジェシーとココの日常の続きがみたいので、読むリストに入れたい気がしてくる。