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あおうま
中島俊郎『英国流旅の作法 グランド・ツアーから庭園文化まで』(講談社学術文庫)
空読みしないように作成していきます。#読書 #英国流旅の作法

§第三章 詩想を求めて田園を歩く ペデストリアンツアー
1 自然が「美しい」という感覚 ―感性の推移
1782年 ドイツ人牧師カール・フィリップ・モーリッツ ロンドン=ダービシャー間
「徒歩旅行者は野蛮人扱いされ、出会う人々からまじまじ見られ、哀れみをうけ、危険な人物と考えられかねない。だからイギリスではペデストリアンは乞食か放浪者、よほど困窮している人間と考えられ、宿無し人よりもはるかに珍しい人間であるとみなされてしまう。」

↓ロマン主義の影響による歩くことに関するイギリス人の感性の変化
 ピクチャレスクツアーの流行による人為的でない自然への興味「自然の風景が美しい」という感性の変革

1794年 ワーズワースの妹・ドロシー
美しい自然とふれあい歩くことが、精神的修養につながる

2 徒歩旅行の出現

旅人の〈条件〉…18c後半(1780年前後)「楽しむために旅をする」人の出現 裕福で、一か月以上を割くことができる。社会・経済的指標
・旅は金と時間しだい ウィリアム・キッチナー『旅人の言葉』(1827)
   旅を可能にする時間と財産 石炭商人の父から受け継いだ遺産
   ロンドンの自宅を出発してから37日間にわたる旅の記録

遊覧用四頭馬車 週2ギニー、馬四頭分 週6ギニー、御者(日当)6シリング6ペンス、交通費59ポンド12シリング 37日間ウェールズ周遊の代金118ポンド
(ベテラン職工の日当2シリング =3年分の年収)

悪路に跋扈する悪漢
浮浪罪(1531) 困窮者を浮浪者と分け、後者を罰する(「道を歩く人は乞食か追剥」)
劣悪な道路状況 舗石のあった町はほとんどなく、揃っていない、凸凹だらけ、穴だらけ
辻切、追剥、強盗の出没←応戦する武器が必要 ※馬車で移動するのが一般的

「あえて」歩く人々の出現 1750年代
ウィリアム・コックス(イギリス国教会牧師、歴史家)『ポーランド、ロシア、スウェーデン、デンマーク旅行記』(1784)
ウィリアム・ボールズ、ウィリアム・ワーズワース(1790年、アルプス旅行)

3 思索としての徒歩旅行 古典主義(理性、写実、形式、均整)→ロマン主義(情熱、心情、想像)人間肯定
極端な例――〈ウォーキング〉・スチュアート『道徳的行動の起源を求める旅』
ロマン主義運動と連動していた旅――ジェームズ・プランプターの徒歩旅行『湖水地方のツーリスト』(1798)
1799年のスコットランド周遊 2236マイルのうち1774マイルが徒歩(五か月間)目的はピクチャレスク観光(クロード・グラスを持参・額縁内の景色のみを愛でる)
旅程:ヒンクストン→ヨーク経由ノーサンバーランド海岸→エディンバラ→ハイランド→湖水地方→北ウェールズより下り→ミッドランド→バーミンガム(18c末の典型的スコットランド周遊ルート)
聖職者らしく質素を旨とした旅行(パン、チーズ、ゆでたまごの食事、民泊)→自己省察の旅。下記二名の訪問
スランゴスレンの貴婦人たち エレナー・バトラーとセアラ・パンスンビィ 年の離れた二人の女性カップル 1778年3月30日に駆け落ち、ウェールズの寒村スランゴスレン「プラス・レワイズ(新しい館)」で暮らし始める。のち隠者として有名になり、著名人から賛辞を贈られる。
悪路整備が高じて道路建設へ ジョン・メカトーフ 四歳で失明、商才にたけており、駅馬車事業ののちに悪路改修に目覚める。1752年、ターンパイク法(第一次)をきっかけに、ボローブリッジ=ハロゲート間に有料道路が通る。三マイルごろに料金所をおくことを進言し、新しい橋の建設にも関わった。1754年8月に架橋し、郵便馬車事業を売却、500ポンドを元手に道路建設事業へと舵を切った。

ツーリズムの産業化 プランプターによる観光業への観察 湖水地方の博物館(提督ピーター・クロスウェイトとハットンの競争)

4歩くことは詩そのもの ロマン派詩人によるウォーキングの追及

・空想の中でも歩く ――詩人コウルリッジ「シナノキの木陰は監獄(This Lime-tree Bower My Prison)」(1797,1800)楽しみにしていたピクニックに行けなくなったことを嘆いた詩

Well, they are gone, and here must I remain,
This lime-tree bower my prison! I have lost
Beauties and feelings, such as would have been
Most sweet to my remembrance even when age
Had dimm’d mine eyes to blindness! They, meanwhile,
Friends, whom I never more may meet again

→傍にある自然から「Life」賛美へ

・さまようこと、すなわち情熱 ワーズワス
ウィリアム・ワーズワース『序曲』「アルフォックスデン日記」 「ワーズワスにとって『公道』は自分が構築する詩的世界へ通じる「道」なのである」p176

・心の満足を求めて ――孤独にストイックに
ロバート・ルイス・スティーブンソン『徒歩旅行』(1876) 「出発から到着までの過程を追いながら、旅する〈自己〉をつぶさに観察し、「歩くこと」の意味を分析した文章である」p178
歩行=自己充足の行為 自分の速度でもって歩きぬくこと
単独=複数人だとピクニック化 精神と行動の自由
道草=疲労を癒すとともに思索へと沈む、心地よい疲れ

『旅はロバをつれて』(1879) 南フランスセヴェンヌ山脈縦走
伴侶としてのロバ←『トリストラム・シャンディ』第七巻

アルカディアを自身のなかに求めて 旅の目的は旅(旅についての現代的な意識表白)畳む