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あおうま
清矢くんたちの話の番外編を更新しました。

First aid panic

アルカディア魔法大一年修了のお祝い飲みで、フェチは何?と聞かれたフェチのない詠ちゃんが地雷を踏んでしまい、仲直りエッチをします。ばんそうこうを乳首に貼ったり清矢くんの清矢くんをリボンで縛ったりしますがあくまで清矢くん大好きな詠ちゃんは何にも目覚めません!

さっさとこの時間軸まで原作を進めるべく頑張っています。詠ちゃんもハスハス
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あおうま
お題「イケボ」#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #詠×清矢 #ComingOutofMagicianYozora

 アルカディア魔法大学三年次、聖属性塔の学祭の出し物はハレルヤコーラス。聖歌隊には入らなかった俺、櫻庭詠(さくらば・よみ)はバリトンに割り当てられて難しい楽譜に四苦八苦してた。風属性塔の音楽室で清矢くんがピアノに腰かけメロディを弾いてくれる。そしてテノールのパートを歌ってくれる。
「For The Load God omnipotent reignth,Halleluja! Halleluja!」
 ハレルヤから音が分かれるけど俺はつられてしまってまともにできなかった。清矢くんは苦笑して言った。
「まず俺の声につられない……ってとこからかな? 自分の耳ふさぐといいぜ」
 俺はケモミミと人の耳を両方腕でふさいでやってみた。でも今度はピアノが聞こえないから歌を入れられない。清矢くんは次はピアノでしっかり俺のパートを弾いてくれた。それでなんとか大丈夫。
「ちゃんと自分のパート覚えねぇと、詠。俺の耳元で歌ってみ?」
 清矢くんはそう言って折りたたみ椅子で唸る俺のほうへやってきた。そしてケモ耳をじっとこっちに傾ける。俺はこわごわ歌った。
「もっと腹に力入れてな。下半身どっしりって感じで……そうそう、上手いぜ、いい声♥」
 清矢くんはそうして俺をほめてくれる。俺はいい気になって朗々と歌う。遠し終わると、清矢くんはふわりとピアノの椅子に戻った。
「じゃあ仕上げな」
 そう言って伴奏を弾いてくれる。俺は楽譜を見て音程の上がり下がりを復習しながら歌った。ちょっとだけ自信がもてる。清矢くんはピアノのふたを閉めて、俺を寮部屋のほうに誘った。ベッドにふたりで腰かけて、俺は清矢くんの腰を捕まえ、じっと見つめ合う。
「なあ、清矢サマに愛ささやいて。超とろけちゃうスウィートボイスで♥」
「うん……今ならとびきりいい声でそう」
 そして俺は精一杯格好つけて、甘い声でこっそり告げた。
「清矢くん、愛してる……! 一生守り通すから、覚悟しとけ」
 上手く誘ってくれてほんと大好き。『ありがとう』の気持ちまで込めて、俺は恋人のきれーなカラダ、大事に大事に撫でまわしはじめた。(了)
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あおうま
母親生存バージョンで未成年設定のヨミ×清矢を書いてみました。生存させると大きく変更になるんでちょっとよく考えていこうと思います

お題「七夕」「願い」

 順和二十八年(AK 1312)七月七日、祈月家愛息・祈月清矢は七夕のその夜もアルカディア語の勉強に勤しんでいた。幼馴染の櫻庭詠が清矢を呼びに来たのは、七時を回ったころだった。
「清矢くん、家で七夕やってるから来ようぜ。花火もするし」」
「いいんじゃないか、広大と一緒に行ってこいよ」
 叔父の宗司が寛大な返事をした。
 肺病での長期入院から辛くも復帰を遂げた母親の草笛雫がやんわりと断る。
「夜に出歩かせるの、ちょっと心配……鷲津の勢力だってまだ家を見張ってるかもしれないし」
 雫がそう言うと、詠は少し赤くなりながら反論した。
「じ、じゃあ、清矢今夜ウチに泊まればよくね? 明日の学校の支度してさ……!」
「母さん、それなら行ってもいい?」
「うーん……」
 雫は少し考えて、曖昧にほほ笑んだ。
「気を付けるのよ。ハーモニカはちゃんとも持ってって」
「おばさん、俺、ぜってー清矢くん守るから!」
 詠は土下座して、明日の制服を着て学生カバンを持った清矢を連れ出した。夏の宵、まだ明るさの残る街や村を走って抜けていき、大社町の詠の家にたどり着く。軒端には大きな笹が飾ってあった。
「清矢くん! 来たかー!」
 普段は神官をしている櫻庭の家のお父さんもお兄さんも麦酒を飲んでくつろいでいる。昔は常春殿の巫女だった母親も瓶サイダーをふるまう。親戚の子供たちが花火で遊ぶ。清矢も持参していた浴衣に着替えて、遊びはじめる。
「はい、短冊」
 詠の母から渡された短冊に、清矢はこう書いた。
『兄に再会したい。 祈月清矢』
「清矢くん、それが願いなの?」
 詠はのぞき込みながら少し悲しい顔をした。清矢の兄、夜空は何年も前にロンシャンで行方不明になっているのである。内定が出ているアルカディア魔法大学への留学で、少しでも兄の足跡を追えればという願いがこめられた真面目な内容だった。
 詠の反応が意外だった清矢は首をかしげて聞いた。
「詠はなんて書いたの?」
 詠はこわごわと見せてきた。そこには『清矢くんと添い遂げる!』と書いてあった。
 清矢はくすりと笑って、詠の短冊に筆で書き添えた。
『Seiya Loves Yomi Forever』
「彦星と織姫にも見せつけてやろーぜ?」
 清矢はそう言って笹に短冊を結びつける。詠は愛しさで焦がれた気持ちを発散するように、勇んで清矢の背にじゃれついていった。(了)#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #詠×清矢 #ComingOutofMagicianYozora
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あおうま
#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #ComingOutofMagicianYozora #詠×清矢

お題「一週間」櫻庭詠(さくらば・よみ)×祈月清矢(きげつ・せいや)

 にちようび、詠とふたりでゴント山デートをする。第三層にある山小屋の二段ベッド下段に横たわった詠は、半裸のままで誘いをかけてきた。
「清矢くん。もうちょっとイチャつこうぜ~。俺、まだ足りねぇ」
「ちゃあんと最後までしたのにもっと欲しいのかよ。腹八分目って言うだろ」
 俺は上半身に羽織ったシャツのボタンを閉めつつ、そんな風に突き放す。詠は歯まで見せてむくれた。
「ヤダ。もう一回抱きあわねぇと俺、山下りねえ」
「ワガママな詠だな~。ちょっとだけだぞ」
 俺はそう言ってベッドに戻ってやり、横たわる詠の短い髪をごしごしと撫でた。詠は心地よさそうに眼をつぶる。そして膝に頭をのっけてぱたぱたとしっぽを振った。俺は石鹸のにおいを嗅ぎながら詠に告げた。
「――そういや、来週はローク神殿の巫女さんたちの戦闘訓練に付き合わなきゃいけないんだ」
「ローク神殿の? どして?」
「風塔にいるやつらはまだ一度もこの山に来たことねーんだって。それじゃアルカディア魔法大学に入学した意味もないからって、合宿形式でって話になってるんだけど」
「ええ、じゃあこの山荘使うのか?」
「うん、風属性塔で貸し切りにするって。最初は一層からってどこまで行けるかって話だよ」
「そっか……じゃ、じゃあ俺一週間清矢くんとエッチできねぇのか?」
 詠はしゅんとする。所属塔が違うから、互いに同室の相手は別だ。この山小屋が埋まってしまえば、日常的に使える逢引の場所はなくなる。俺は軽く笑って詠のあご下を撫でた。
「仕方ねぇだろ。一週間後は期待してるから、とっておきのデートコース頼むぜ」
「うん、俺、考えとく……」
 ぽつぽつと答えた詠はしゅんとしていた。
 げつようび。風塔のメンツとともに、ゴント山三層の山小屋に移った。行軍なんかしたことない巫女さんたちはまず三層まで行き来するだけでも大騒ぎだ。ゴブリンに悲鳴を上げ、ウィル・オ・ウィスプに絡まれて逃げまわり、クランプス相手に鈍器で立ち向かったりもする。刺激しないよう𠮟りつけ、魔法で射貫いてやり、クランプスの注意を引くためにハーモニカで挑発したりした。山小屋についてからも料理係を押し付けられ、何もしないロークヴァランドやレダに苛立ちつつ、十人分以上のカレーを作る。飯食って体洗ったころにはもう疲れ果てて、充希とともに気絶。
 かようび。予定では四層以上を目指す予定だったけど、前日の惨状に首をひねった先生が、一層・二層での基礎トレを望んだ。剣士の俺、充希、そしてボルィムールが前衛として敵とやり合うすきに、後ろから詠唱して魔法を当てるだけの簡単なお仕事だ。だけど魔石を手にして顔を輝かせたり、属性を覚えて少しずつ自信をつけてく様なんかははたから見ていても充実感がある。午後になると詠がひとりでやってきた。充希が腕組みしながら首をかしげる。
「どーしたの詠ちゃん、一人で出稼ぎ?」
「え、えっとっ、手伝いに来た。剣士、足りてねぇだろ? 俺でよければ加勢するぜ」
 詠は目いっぱいこき使われて次は聖属性塔にいるローク神殿の巫女、テヌー・イリアンをつれてくるよう言われて帰ってった。
 すいようび。詠がテヌーを連れてきた。テヌーは聖属性塔の仲間に連れまわされてるみたいで、風塔にいる同僚たちよりは戦闘慣れしていた。
 もくようび。詠は俺と二人で水汲み役を買ってでた。自分も戦闘し通しで疲れてるはずなのに、詠はキラッキラな笑顔で「俺が代わりに運んでってやるよ清矢くん」と頼りになる。井戸から帰る途中に横顔にキスしたそうな空気出してたけど、俺はみんなに見られちゃうかなと思ってさりげなく避けた。
 きんようび。音楽仲間のドリス・メイツェンが負傷しちまって俺は自分を責めてた。ドリスだけを守るわけにはいかねぇけど、大事な仲間に怪我させた。前衛失格だ。ローク神殿の巫女たちは余所者のドリスには親身になってくれねーから、俺がヒールしてやって仕事を代わって上げ膳据え膳してやった。
 どようび。下山の日だ。結局目標の六層まで踏破することはできなかった。なんつーか、ドリスのことは怪我しても蚊帳の外みたいな、ロークヴァランドの位階は高いから飯炊きなんかできませんみたいな、巫女たちのお高く留まったところが問題なんじゃねーかなと思う。敵の構成を説明したり、役割を割り振るときにも、しれーっと聞いてるだけで食いついてくるぐらいの気概がみられない。叱れば俺は悪者にされる。特殊な位階らしいロークヴァランドとレダの前では戦士のボルィムールも畏まってしまって意見が通らない。
 そんでもう一回にちようび。詠に連れられてペンシル波止場まで出て行って、砂浜でまったりした後カフェでお茶しつつ俺はそんなこと愚痴った。詠は金曜日以降山に来なかったからか、耳を傾けつつもちょっと拗ねてみせた。
「清矢くんはそう思ってんだ。まぁドリスは美人だし、バイオリンもうまいもんな」
「美人とかバイオリンとかは何にも関係ねぇだろ」
「そっかな。清矢くん、ドリスにはすげー親切にしてるよな。仲もいいしさ」
 あんまりにも幼稚すぎる勘ぐりに俺は本気で腹立った。
「そういう話じゃなくね? 俺はローク神殿の巫女たちのことを批判してんの」
 ドリスの味方をした俺に、詠はしゅんとした。
「ゴメン……でも二人の付き合ってるって噂すげーし、俺だって普通にはしてらんねぇよ。だって清矢くん俺が訪ねていっても冷たいんだもん……」
 詠はそう言って小箱を差し出してきた。中には七つのキーホルダーが入ってた。木彫りでできた人形で、どれもデザインが違ってる。アルカディア島への観光土産みたいだった。詠がうなだれて打ち明ける。
「俺な、これ買ってきてた。風塔のみんながちゃんと合宿終われたら一人ずつに記念で渡してほしいって思って」
 ボルィムール、ロークヴァランド、レダ、ミル、ドリス、それに俺と充希。たしかに七つ分ある。詠は気まずそうに言って、中座しようとした。
「今、そんなことする気分じゃねーよな、ゴメン。早合点だった」
「詠、待て!」
 俺は弾かれたように立ち上がって、詠の頬を両手で抱え込み、真正面から堂々とキスした。カフェの客たちがひゅう、と口笛を吹く。
「せ、せいやくん」
 一週間が待ちきれなくて、火曜日にはもう俺に会いに来ちまってた詠。
 水曜日、テヌーを守りながら律儀にやってきてくれた強い詠。
 木曜日、二人きりになりたくてそわそわして、ちょっとした隙にはすぐにキスをねだってきたこらえ性のない詠。
 金曜日、ちょっと冷たくされただけでショックで姿を見せなかった詠。
 土曜日はこのキーホルダーを買いに街に出てたのかな。芸のないデートコースも一応は考えてたのかな。
 不器用でいじらしいまっすぐな詠が可愛くてたまらなかった。俺はキーホルダーの中で一番クールそうなオッサンを選んで、指にかけてくるくる回す。
「俺も半分、お金出すよ。詠ホントにありがとな。俺たち風塔のことまで想ってくれてさ」
「ん、でもさ、今日だけは清矢のこと全部、俺にくれない……? 全然一緒にいられなくってキツかった」
 コーヒーのにおいなんかさせて詠はあざとくおねだりする。否やはない。あるわけない。一週分の寂しさを埋めるために、俺たちは軽やかに喫茶店を出てった。(了)
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あおうま
清矢くんたちの話の本編続きを更新しました

盛夏の夜の魂祭り 嫉妬の業火は諸刃の剣(1)

同時に時系列がおかしかった部分(夜空への手紙二通)を訂正しています。
今回は充希に詠ちゃんがやきもちをやいたりお尻を叩かれたり大活躍!
恋愛風味になるのは次っぽいです……
BLであるということを忘れずに頑張っていきます
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あおうま
お題「羽目を外す」ウィリアム・E・マリーベル×祈月夜空

 俺は故郷からしたらとんだ裏切りものだった……弟の清矢たちがグランドマスターを味方につけ、堂々と手続きを踏んでアルカディア魔法大学に入学し、持ち出していた妖刀、新月刀を奪い返されてしまってから、俺は輝きをすべてなくしてしまったかのようだった。ロンシャンでの頑張りも、ボスやセバスチャン様への忠誠も、全部「誘拐と奴隷労働」として片付けられ、清矢は母に似たどこまでも物憂げな美貌で冷たく俺を見下した。

 ウィリアム・マリーベルとの関係は相変わらず考慮の内だった。彼の故郷にともに赴き、バックグラウンドを知って、問題の解決に手を貸しはした。けれど俺は薄汚い盗人で(素直に家宝を返したことで、かろうじて犯罪者にならないで済んだだけだ)彼にふさわしくはなかった。謹慎が解けて闇属性塔に戻ると、ノエーミやソフィアは優しく励ましてくれ、不思議なことに清矢たちも俺に取るべき授業の情報をこまめに与え、停学期間中のノートを写させてくれた。

 俺は、(大幅にケチはついたとはいえ)まだアルカディア魔法大学でやっていけそうだった。

 とばっちりを食って同じく停学になったウィルとは、昨年休講だったボルトの実習授業で一緒になった。俺は自分の罪に相変わらずおびえていて、自らの過去と決別したウィリアム・マリーベルとは相変わらず不釣り合いだった。彼は天空から降り注ぐ炎の矢を器用にキャスティングし、威力も上々だ。サー・ブライアン・スコット教授が理想的とほめたたえる。俺は目立ちすぎないように清矢の親友の詠と一緒にいた。

 ウィリアム・マリーベルはそのまま、何も言わないまま、俺とは違う世界の住人になることだってできたと思う。いわゆる自然消滅ってやつだ。清矢は彼が俺のロンシャンでの後ろ暗い人間関係に巻き込まれることを厭い、事前に注意をしていた。でも彼は、やはりどこまでも折り目正しく、熱いまっすぐな心を秘めた男だった。

「夜空。話がある」

 俺はその時覚悟してたと思う。

 詠は清矢と違ってお節介でも詮索好きでもなかったから、知らんぷりで次の授業に駆けていった。

 中央校舎の幾何学式庭園をあてどなく歩きながら、ベンチに腰を下ろす。マロニエの樹影はやわらかで、緑がかった光に包まれた金髪緑眼のウィリアムはどこから見てもけがれなき聖職者見習いに見える。風薫る季節、俺は泣きたくなって自分から白旗を上げた。

「ウィル、巻き込んでしまってごめん。君はもう俺に呆れたよな。どんな決断も、受け入れるよ……」

 ウィリアムはしばらく黙っていたけれど、やがて俺の手に手を添えた。

「私は君の友人だ。けれど同性愛者だ。君を欲望の対象にしてしまったことにずっと自責の念があった」

 俺はフレンドという名詞が含む意味を自分勝手に了承した。けれどウィルは畳みかけてきた。

「だが……君は過ちを悔いているんだろう? 罪人という意味でなら私もだ。それに、その位置に甘んじている気はないんだろう? ならば簡単には見捨てない」

 まるで聖人みたいな答えに俺は驚いて、でも思わず瞳から涙があふれた。恥ずかしくて下を向いて顔を覆う。ウィルはその頬にそっと触れ、続けて初めて会ったときと同じようにキスしてくれた。その羽毛みたいな微かな感触だけで、すべてが浄化されていくような気がする。

「ウィル……愛してる」

 それ以外のセリフはどれもそぐわなかった。ウィルは涼しく微笑んで言った。

「私は君とならどこまでも……羽目を外したい男なんだ、夜空」

 俺たちはうすみどりの颶風の中、同志としてずっと寄り添っていた。

#マリーベル×夜空 #ComingOutofMagicianYozora #[創作BL] #[創作BL版深夜の60分一本勝負]
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#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #ComingOutofMagicianYozora #詠×清矢

お題「眼鏡」「意外」櫻庭詠(さくらば・よみ)×祈月清矢(きげつ・せいや)

 その時の俺の内心は「何故」「可愛いんだが」「詠×メガネで好き×好きの無限大」「詠視力悪くなったのか?」「メガネっこサイコー!」と風雲急を告げていた。黒ぶちの角ばったオサレメガネを装備した詠は俺の方を振り返って、ニッと得意気に笑った。いかんいかんぞけしからん、世界が恋に落ちてしまう!
 俺こと祈月清矢は何を隠そうメガネっこ好きだ。詠以外に告白されたことのある素敵な女の子がメガネだった影響もあるのかもしれない。メガネの「世の中のあらゆるチャラからは身を守ります」っていう無駄な防御力、醸し出される真面目キャラ、外したときの「本当のアタシ」感、視力よくないっていう若干の守ってあげたくなる度、ともかくフェチとして完璧だと思うんだよな俺は! 木曜日の「アーカイビング実習」に現れた詠はあざとく俺の興味をかっさらった。
「どう?  清矢くん。俺賢そうに見える?」
 詠はハタハタと尾っぽを振りながら得意気にブリッジをくいっと上げる。飾り気のない短髪に人懐こそうなくりくりした瞳の愛すべき詠。俺はやにさがってしまうのもこらえてとなりの席に座った。
「詠、視力悪りーの? なんか気づいてやれなくてゴメンな」
 詠はそれを聞くと頬をふくらませてニヤニヤ笑いを強くした。
「へへ。伊達メガネだって~! 清矢くんメガネ好きだろ、だから俺もイメチェンでかけてみようと思って……」
「よ、詠……!」
 俺の恋人はなんて可愛いっ! その場でギュッと抱きしめたくなったがエミーリアもドリスも充希もいるからやめといた。シオン先生がやってきて本日の「アーカイビング実習」座学が始まる。古くてきったない魔導書の切れ端なんかを訳してく地道な作業に涙が出そうだが、メガネ装備の詠は心なしか立派な学徒に見えた。
 授業が終わって俺はソッコーで詠を寮部屋に連れ込んだ。ベッドに座らせて両肩をがしっと掴む。
「詠っ、俺な、俺……実はメガネフェチなんだ。そんで『キスのときも取らない』派閥なんだっ……! 頼む、俺に夢をかなえるチャンスをくれっ……!」
 いつもは詠がワンコっぽくおねだりばっかりなのに、俺は身も世も捨ててマジ顔で頼み込んだ。詠はこくんとうなずいてレンズの奥のまぶたを閉じる。俺はドキドキしながら顔を近づける……! 思った通りメガネが邪魔でまつ毛にかすっちまう。俺は弦をつまんで、ちょっとズラして鼻と鼻をくっつける。マジで夢見たとおりの仕草だっ……! ぎゅうっと抱きすくめてそのままベッドに押し倒すと詠がちょっと焦った。
「清矢くん、何コーフンしてんだよ~! やっぱメガネ取ろーぜ、邪魔だよこれ」
「だ、ダメだっ! メガネは乱れてこそ花! 取るなんてとんでもねーよ!」
「ヤダよ、壊れちまうじゃん! このまんまエッチすんの……? な、なんかヘンタイくせーな」
「いまさら何言うんだよっ♥ なー詠、一生の願いだ! メガネっ子との妄想叶えさせてくれよぉおお!」
「んー、じゃあフルコースでお願いな。俺溜まってるから……入れさせて……くれるよな?」
「もちろんオールオッケー!! その代わり絶対はずすなよ! メガネが本体っ!」
 俺は勇んでジャケットとシャツを脱ぎ去り、もったいつけてそう簡単にはヤラせない普段とは別人のように鼻息荒く詠を襲い始めた。ずれたメガネ越しにあえぐ詠はサイコーに可愛かったね。思わず新しい境地に目覚めそうになっちまった。やりたがりの詠は翌日もメガネかけてくるかと思ったけど、調練場で元気に跳ねながらバッチリ裸眼だった。
「なぁ詠ー、今日はメガネじゃないのか?」
「さすがにメガネが本体っていうのはなくね……? たまの楽しみってことで」
「何でだよぉお! 俺に毎日トキメキをくれよ!」
「だって俺運動するしキスもしづらいもん……」
 詠はそう言って俺の腰を抱き寄せ、キスに及びそうになったが俺は両手でブロックした。
「何往来でことに及ぼうとしてるんだよ」
「清矢くん、ここは流されるシーンだろ? メガネかけてたらオッケーだったのか?」
「うん。メガネっこのすることなら何でもオッケー」
「それって俺よりメガネが好きってこと……」
「まぁ当然だろ。対清矢サマの強烈なバフだよメガネは!」
 そう本音を告げてしまうと詠はふくれて俺を離した。
「……もう二度とかけねえ」
「えーっフェチなんてそんなもんだろ! お願いだよ詠~! まだ俺の最高のエロ展開コンプリートしてないじゃん!」
「ダメっ、ダメだ。俺の清矢が歪んじまう!」
「厳しいママかよお前は! もう歪み切ってるからー! な、お願い! メガネ男子のシチュだけでも俺何通りも考えられるから!」
「じゃあ俺のお願いも聞いてくれる? 今日も山小屋行って二人っきりでしたい」
 俺は上目遣いの詠に問われて思わずうなずいてしまった。ダメだねー男のフェチは即物的だよ。これからしばらく俺の腰大丈夫かな? 普段と立場が逆転しちまったけど、満身創痍でも俺は叫べるぜ。『メガネかけた詠サイコー!』ってな。(了)
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あおうま
#仁王2 #詠×清矢

清矢くんのキャラクリをちょい弄ってみた 眉がなー上手くいかなかったんよなー 性格がキツいようで詠ちゃんを甘やかすクーデレ。プライドは高い😅
お母さんの雫とそっくりって設定だったけど雫さん思いのほかきつい顔立ちな!?

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何か写り悪いので修正‼️キャラクリの沼は深い…☺️
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あおうま
#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #マリーベル×夜空 #ComingOutofMagicianYozora

お題「スーツ」「イメチェン」ウィリアム・エヴァ・マリーベル×祈月夜空

 大晦日、クリスマス休暇で多くの学生が寮を出ている時期だ。夜空の弟の清矢と友達の充希は居残り組を集めて風属性塔でオールナイトパーティーを開くことになっていた。夜空も誘われており、夕暮れのどこかほぐれた空気のなか、ジャケットだけ羽織ってお菓子片手にサロンへと急いだ。
 風属性のエメラルドグリーンの魔法石が鎮座する大理石造りのサロンには、紙のモビールやバルーンで飾りつけがされていた。清矢と充希がいないので探したが、彼らはどうやらキッチンで何かご馳走をこしらえているようだ。夜空は教えてくれたミル・サルーマやマリアンヌといった綺麗所と共にロゼシャンパンを片手に待つことにした。
「今夜、マリーベル先輩はお越しになるんでしょうか?」
「誘ってたし来ると思うよ」
「わたくし、信仰について先輩とお話したいですわ! 普段は何か避けられていて……」
「気のせいじゃないかな? ウィルは理由なく人を遠ざけるようなことはしないよ」
 噂をすれば影というもので、四半時も待たないうちにウィリアム・エヴァ・マリーベルが花束片手に登場した。場が華やぐとはこのことだ。普段はお仕着せの修道服だが、カーキグリーンのスーツに、濃いブルーのファッションシャツを合わせ、ノーネクタイで決めている。金髪緑眼、意思の強そうな美貌の青年が鮮やかに着飾って現れ、ミルもマリアンヌも修道女という立場なのに浮かれ騒いだ。
「きゃぁあああっマリーベル先輩! スーツお似合いですわっ」
「素敵ですね、モデルさんみたいです」
 あっという間に女の子ふたりに囲まれている。夜空も頬を紅潮させながら取り巻きに加わった。
「ウィル、素敵だよ! 君もそんな恰好をするんだな」
「夜空……いや、パーティだと言うから。セイヤやミツキはまだか?」
「キッチンで何か準備してるみたい。俺たちは先にお酒いただいてるよ」
「私はビールがいい」
 ウィリアムはポケットに手を入れつつ夜空のとなりに座った。清矢・充希・詠の三羽烏が大皿いっぱいのミートローフを持って登場する。料理のにおいをちょうど嗅ぎつけたのか、葉海英・貞苺兄妹といったアジア組、またオルク・ジェド・アースシーといったアルカディア島出身者なども集まり始めた。詠が聖属性塔制作のワインを栓抜きで開け、清矢の号令でパーティの幕が切られる。女の子は花に引き寄せられるミツバチがごとくに着飾ったマリーベルに声をかけていく。
「夜空、切り分けるの手伝ってくれよ!」
 弟のくせに態度がでかい清矢が上から目線で言いつけてくる。恋人の美しさに浮ついた気持ちになりながら、夜空は日本人グループの輪に入っていった。
 ……一年をしめやかに追想するといったまじめさとは程遠い、騒いだパーティが始まった。レコードでジャズやオールディーズがかかり、ロンシャンで勉強漬けだった夜空は曲目をいちいち清矢に教えられる。気づくと、ウィリアムと話す機会はほとんどなかった。ニューイヤーカウントダウンがはじまり、特別に図書館で鐘が鳴らされると同時にクラッカーがはじける。みな酔いまくっていて、笑い上戸の清矢などは詠の一言一句をからかって楽しそうだ。
 手洗いに行って熱を冷ましたくて階下に降りると、ウィリアムもやってきた。暗がりに明るい色合いの青年が浮かびあがる。ファッショナブルな装いに身を包んでも、育ちの良さは隠せずに、姿勢はよく所作も丁寧だ。階段に座っていた夜空はへにゃっと笑って手をこまねいた。
「ウィル。君も酔いざましかい?」
「ああ。夜空、君を追ってだ。まったくマリアンヌは軽薄な……修道女だという立場を分かってるのか」
「君のことが好きなんだよ、かわいいものじゃないか」
「……私の恋人は君だ」
 仏頂面になりながら、ウィリアムはそう言った。生真面目なその物言いがくすぐったく、夜空はいきなり唇にキスした。とたんにウィリアムは赤くなってそっぽを向く。
「あけましておめでとうございます。来年もよろしく」
「……ああ、君には来年も驚かされそうだ」
「えへへ。こんなサプライズなら任せて」
 笑いながらそう言って頬を小突く。横から思いっきり抱き着いて、ぬいぐるみにするように頬ずりした。汚れなんてなさそうな美貌も、ひたむきなまっすぐさも、照れ屋なところだってみんなみんな、今だけは、俺のもの。パーティを抜け出した二人だけの幸せに酩酊しながら、夜空は特別な夜に感謝し、ウィリアムの肩に頭を預けた。(了)
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お題:「お花見」「花びら」櫻庭詠(さくらば・よみ)×祈月清矢(きげつ・せいや)

 三月初旬、そろそろ試験だって言うんで授業も追い込みが始まったころ。トモダチの充希が俺にこっそり耳打ちしてきた。
「レダ・アチュアンの実家に行く約束したんだけど、疑われないよーに清矢くんと一緒に来てくんない?」
「どうせ荷物持ちだろ。気があるなら一緒に行ってやればいいじゃん。俺たちなんて邪魔なだけじゃね?」
「いや、レダってローク神殿の巫女さんだしさ、変な噂が立つとヤバい訳。清矢くんもなんかピリピリしてるし、詠ちゃんデートぶって途中で連れ出しちゃってよ。ちょうど花盛りの時期で綺麗らしいよ」
「べつにいいけど……レダが好きなら男らしく最初から隠さねえほうがいいと思うぜ」
「うーん、詠ちゃん、芸もなくまっすぐならカッコいいって思ってる? 女の子はそんなんじゃ乗ってこないよん。レダがその気なら俺も考えなきゃいけないこといっぱいあるし、本心探りたいの」
 俺はしぶしぶ了承して、その週の休日は四人でレダの実家に行った。「夢見」の占いをつかさどる巫女さんだし、充希になんか脈はないんじゃないかなーと疑りながら。車や馬車よりも牛が荷車を引いてる広い舗装されてない道路ぞいに、アーモンドが街路樹に植えられて咲きほこってる。どこか懐かしい桜そっくりのたたずまいに、俺の心は踊った。
「清矢くん! 花盛りだぜ、ちょっと見ていこうよ」
「ここの花は取っちゃダメ、実を収穫するから」
 テンションを上げた俺たちに、レダがまなじりを吊り上げる。充希が諭すと、レダは納得したようだった。
「じゃあお二人さんはここで待ってなよ。俺が荷物持ってくから」
「充希、平気か? 一人で全部はけっこう重たいぜ」
 俺たちが裏で通じてるなんてまったく知らない清矢くんは目をぱちくりさせた。俺はレダの本を持ってた清矢くんの手を引く。
「なぁ、お花見しよーぜ。俺、清矢くんとデートしたいよ」
「でも……帰りでいいじゃん? まず荷物運んじまおうよ」
「清矢くん、だいじょーぶだから。俺力持ちだし♪」
 にこっと笑う充希は、ボストンバッグを無理やり背負って本まで持つとあからさまにフラついてた。でもまあ恋のためだもんな。ちょっとわざとらしい一幕を挟んで、俺たちはその場にとどまった。
「……おおかた、充希に頼まれたってとこ? レダとなんか恋仲になったら大変だぞ、打ち首でもおかしくない」
 鋭い清矢くんは気づいちゃったけど、俺はアーモンドの幹に清矢くんの背を押し付けて、両腕で閉じ込めてキスした。ワーオ! って子供がはしゃぐけど聞いちゃいねぇ。俺の箱入り王子様、清矢くんは眉をひそめてる。
「なーにやってんだよ、詠。そだな……ギャラリーもいるし、ここは外だし……」
 清矢くんは柔らかく俺の腕から抜け出すと、木の根元に座り込んで服の中からハーモニカを出した。そして形いい唇を湿らせて、錫の楽器にそっと滑らせる。祈月の家に伝わる『風の歌』の不思議な旋律だけが透明に響いた。
 とたんにざっと吹きわたる、無慈悲な風。舞い散るピンク色の花びら。散りかかるきらきらした花弁に彩られて、細面でうつくしー清矢くんの憂い顔は完璧に絵になっていた。
「悪戯しちゃダメだな、別の曲にするか」
 俺は落ちてきた花びらを器用につかまえて、清矢くんに見せようとした。ようやく微笑んで、清矢くんは俺の前髪に手を伸ばす。
「ついちゃってるぞ、花びら……ベタなアピールすんなよ」
 そうやってつまみ出されたほうも手のひらにのせて、ふっと吹き飛ばす。魔法の曲で呼び出された風のショーに、子供たちはきゃあきゃあはしゃいでる。俺も座り込んで、清矢くんの肩を抱いた。
「ほんと可愛いのなー、詠は。俺は幸せものだよ」
「清矢くんそれ、俺のセリフ。全部取っちまうのやめろよな」
 そう言ってほっぺにももう一度キス。心の中まで全部がうすくれないだった。遥か海を越えても、それは幸せの色だった。(了)