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あおうま
#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #[創作BL] #詠×清矢 #ComingOutofMagicianYozora

お題「仲良し」「抱きつく」

 多数のベルトコンベアが置き去りになった広場を抜け、地下があることに気づいてピットまで降りてしまったのが運の尽きだった。中にいる魔物と懐中電灯の光の中で間一髪で渡り合い、退魔コンパスで安全を確認したまではよかったものの、工具でこじ開けた四角い進入口が開かなくなってしまったのだ。
 細い黒髪をセンターショートで切りそろえ、白銀の毛並みの獣耳と尾をもった白狼亜種・祈月清矢(きげつ・せいや)は、1メートル下から剣でがたがたと蓋を叩いたが、反応する者はなかった。
「やべぇな。ここには換気扇も通気口もない。早めに連絡しねぇと……」
 詠(よみ)の幼馴染であり、恋人でもある青年はそう言って愁眉を曇らせた。
 きっかけは、図書館で見つけた「BC遺跡散策ツアー」のビラだった。BC遺跡とは、ビフォアカタストロフ、つまりN2世界崩壊以前の建物で、現在放棄された廃工場などの施設を言う。魔素出現以前に作られた施設なので、物理演算に魔素係数を必要とする今となっては大規模生産には使えず、無用の長物として普段は閉鎖されている。当然、魔物が住み着き最悪の場合は人の入れない魔境と化している。まれに、マジシャンたるアルカディア魔法大学の学生からアルバイトが募られ、内部の調査と魔物の駆除が行われるのだった。
 一年年長のクリストフ・”アイフェン”・ホルツメーラーが散策隊のリーダーだ。清矢は獣耳にイヤフォンをつけ、テレパス通信を行って場所、人数、代表者名、キーワード、時刻、状況を報告した。入口にはベースが立てられ、随時情報検索を行っているはずだから、いつかは助けがくるはずだ。アルカディア魔法大運命塔の集合無意識監査室にも届けばよいのだが。
「清矢くんごめん、光量が少なすぎるって俺が気づいてれば……魔物、大丈夫かな」
「コンパスによればいちおう魔物は殲滅されてるみたいだ。仕方ない、しばしマッドティーパーティといこうぜ」
 頭上や背後を縦横にかけめぐる排水管に背を預けて、清矢が肩をすくめた。
 冷たい乾いたレーションを貪り食って、水筒にいれてきた砂糖入り紅茶を飲み、一息ついたその後、詠はどっと後悔に襲われた。まず、こんな場所を見つけたといっても、安直に降りていくべきではなかった。せめて他のバディと連携をとってからにすればよかった。真っ暗闇の中で魔物に襲われるなんてぞっとする話だ。冒険心が勝った選択は愚かなものだった。詠は清矢のそばに歩み寄り、白いレザーコートの戦衣の肩をおもむろに抱き寄せた。ぱちくりと清矢が瞬きする。
「詠? どうした……怖くなっちまったのか?」
「怖え。怖えよ、俺。清矢くんと一緒なのはいいけど、もし何かあったら……」
 退魔コンパスの精度には限界があるし、テレパス通信は受信側に大きな資質と注意深さが必要とされる、不安定な技術である。魔物の傷がもとになって、階段で転んで、ゴント山で遭難して……ひとが日常の裏側に落ちてあっけなく死ぬのは、毎日の新聞に欠かせないニュースだ。抱いた感触はレザーの冷やかさしかなかった。
「ん、詠……いい子いい子」
 清矢は憎いくらい落ち着いており、代わりにぎゅっと詠の鎧の胴を抱き返してきた。暗闇のなかでもわかる、相棒の気配。草っぽいさわやかな香りもする。デオドラントだろう。そうして詠の獣耳を搔き、頬の輪郭をさすって慰めると、リュックからブルーシートを出してコンクリートの床に引いた。
「座って休んでようぜ」
 詠はうなずくと、清矢と並んで座り込んだ。コォン……と何かの衝突音が響くのに神経を高ぶらせながら、暗がりに肩を寄せ合う。しっかりと握りこんだ互いの手が、唯一の温もりだった。世界の終わりというなら多分こんな光景だろう。その妄想は悲劇的な甘美に彩られたもので、詠は何度も清矢の頬にキスした。
 ――ただひたすら待つだけの時間が過ぎた。半日も過ぎたと思ったが、実際は太陽の加減からして二時間も遭難してはいなかったようだ。クリストフとハインリヒ、それにエミーリア・ヘクタグラムカースとドリス・メイツェンが心配そうに進入口からのぞき込む。ヘッドライトの丸い光に照らされて、詠は顔をしかめた。
「セイヤ大丈夫? ああいった地下には、二酸化炭素や有毒ガスが充満して中毒の危険性もあるって先生も言ってた。念のためディアしておこうよ」
 エミーリアが金色のポニーテールを揺らしながらぺたぺたと清矢に触れてヘルスチェックをしている。ドリスもバブル・ガムをくちゃくちゃ噛みながら隣から離れない。当の本人は、悪ぶった笑みを浮かべてピースサインをした。
「地下の魔物も根絶完了。ひょっとしたら俺たちが成果ナンバー・ワンだな」
「よく言うぜ。半分以上暗がりでイチャついてたくせに」
 ハインリヒが間髪入れずに茶々を入れる。否定せず詠に向かってウィンクした清矢を、エミーリアがとたんに平手打ちした。
「何やってんのよ、こっちは泣くほど心配したのに! ホント、セイヤってばあたしのこと水栽培の花程度にしか思ってない!」
「男同士で地下にしけこむ前に、レディたちを護衛しなさいよね」
 ドリスも鼻を鳴らして清矢の頬を人差し指ではじく。そもそも渋面を隠していなかった引率のシオン図書館長はとげのある声で聴き返した。
「そうですか。遭難物のラブストーリーを演じた結果でしたか。アーカイビング演習の平常点から十点引いておきます」
「ち、違いますっ、わざとじゃないですよ! 図書館長~信じてください~!」
 それまでの冷静さが嘘のように、取り乱した清矢が図書館長を拝み倒す。ベースキャンプは笑いで包まれ、調査はお開きになった。帰り道、罰ゲームで女子ふたりのリュックまで持たされた詠は清矢に謝る。
「清矢くんごめんな。俺のせいだ」
「自分を責めるなよ。俺は、詠とふたりっきりで嬉しかったぜ? あと信じてたし」
「俺も……清矢くんとならなんとかなるって、信じてはいたけど。でも結局待ってただけだし」
「んー、詠! じゃあ帰ったら、清矢サマのこと肌で慰めてね♡」
「や、やめろよ! まだエミーリアが聞いてるかも……!」
 清矢は進行方向を反転させ、サムズアップしながら詠に笑いかける。
「俺たちって最強のコンビだって、ちゃんとみんな分かってっから! これからも頼むぜ、詠~!」
 夕日がきらきらと輪郭を透かした。逆光でいたずらっぽく微笑む恋人の顔に、詠は馬鹿みたいに見とれてしまった。しかし図書館長も律儀なもので、学期末に発表された『アーカイビング演習』の成績は見事に点が差っ引かれていたというのが、この話のオチである。(了)
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あおうま
#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #[創作BL] #詠×清矢 #ComingOutofMagicianYozora

お題「記念写真」「撮影」
櫻庭詠(さくらば・よみ)×祈月清矢(きげつ・せいや)

 祈月の家宝を持ち逃げした夜空っていうやつのために、俺たち櫻庭詠(さくらば・よみ)と祈月清矢(きげつ・せいや)、そして望月充希(もちづき・みつき)はアルカディア魔法大に留学することになった。地獄の受験勉強もひと段落して、今日はかの国に渡るための旅券を作成するために、証明写真を撮る予定だった。三人そろって写真館に行って、二階のスタジオで一人ずつ撮ってもらう。清矢くんも俺もあつらえてきた新しい戦衣、充希だけはオーダーメイドしたスーツだった。きれいにタックが入ったスーツできめた充希は文字通り『年上』って感じだ。清矢くんは家が特別に仕立てた白地のレザーの戦衣を着てた。立ち襟のコートと、細身の体を覆う黒の皮鎧だ。腰から腿はガーターで外からキュッと締め上げてあって簡単に脱げないようになってる。ポーチもゴテゴテついてるけど、何を入れとくべきかはけっこう議論がある。薬っていっても魔法薬までいれるとけっこう種類があるし、清矢くんは『櫛でも入れとくか?』なんつって冗談めかしてたけど。コート背面は漆黒で染め抜かれた新月紋。胸元についたきらびやかなチェーンやカフスなんか見ると、戦にいくための衣装っていうよりは、はっきりと晴れ着。
 俺なんか新しいとはいえ、いつもの神兵隊の黒装束だ。体にぴっちりフィットして、まぁダサくは見えないと思うけど上に重い鎧つけることが前提。だからか、体の線が出すぎてるんだよなコレ。俺もスーツにしてもらえばよかったよ。
 撮影は充希からで、清矢くんは手鏡で前髪いじったり俺に言わせれば女々しい仕草してたけど、十分くらいで充希が出てきて、次は俺の番ってなったらやっぱり俺も「鏡貸して」って清矢くんに言っちゃった。なんか情けねー。
 三人分の撮影が終わって、何枚も組になった証明写真の出来をチェック。充希と清矢くんは互いのマジ顔でゲラゲラ笑ってる。俺は警戒して即荷物の中にしまった。清矢くんが肩組んでのぞき込もうとしてくる。
「詠~! 詠も完成写真見せて♥ ひきつった笑顔しちゃってんじゃねーの?」
「ヤダ。清矢くん写り悪いって笑うもん」
「笑わねーよ。なー、一枚ちょうだい♥ 可愛い清矢サマのお願い聞いて~!」
 俺はなんか根負けしてしまって、一枚はさみで切ってあげた。男前に写ってるとはとても思えなかったけど。清矢くんはカードよりも小さい顔写真をしみじみ見て……ちゅっとキスしちまった!
 もどかしいような気恥しさが湧いて、俺は写真を取り返そうとする。
「や、やめろよ清矢! キスなら直接すりゃいいじゃん!」
「何度もしてると飽きがくるっていうか~。この詠はいわゆる『公式肖像』だろ? やっぱ俺のものってアピールしたいじゃん♥」
「清矢くんの独占欲ちょっとこわくない? 俺そこまで重いのパース」
「んだと充希お前のもよこせっ」
 乱暴にじゃれあい始める充希と清矢くん横目で見ながら、俺はちっちゃく清矢くんの袖掴んで言った。
「清矢くんのも俺にちょうだい」
「ん、好きに可愛がってね。一枚詠に預けるから♥」
 もらった写真をそれからどうしたって? ……手帳のカバーに挟んで、俺は時折眺めてる。新しめの戦衣を身に着けた清矢くんの鋭い眼光が決まってる。いかにも俺のあこがれてる祈月ん家の次期当主様って感じのスキのない写真だ。俺は普段の清矢くんも愛してるけど、立派なオフィシャルの姿見ると何だか奮い立つものがある。勉強の合間に見つめては、頑張るよ俺ってテレパシー送ってる。おでこくっつけたり、キスとかまでしちゃったかどうかは……トップシークレットだ。(了)
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あおうま
充電ネタがツイッタで流れてきて…
充電ネタ大好きなんですよね
前回とあんまり変わりないかんじですが詠ちゃんが甘えて清矢くんがよしよしする黄金の方程式を再開発してみました。今回もR18です

召しませ特製Energy Cell!

それとサイトデザインもリニューアルしました 詳しいレシピなんかは後で書くかも

どうぞよろしくお願いいたします。#ComingOutofMagicianYozora #詠×清矢
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あおうま
カズオ・イシグロ著『クララとお日さま』ハヤカワepi文庫 2023年

現在実用しうるレベルの生成AIが出てきて、とくに絵画系はヒステリックなバッシングにさらされているけど、これもAIのお話。
人型AI、人工親友(Artificial Friends)のクララは、ウインドウショッピングで見初められた病弱の少女、ジョジーに友人として買われる。
幼馴染で恋人のリック、母のクリシーなど周囲の人々とかかわりながらも、太陽光蓄電のクララは「お日さま」へのピュアな信仰を保ち、ジョジーの病気回復を祈りはじめる。
カズオ・イシグロの近未来ディストピアものにはすでに著名な『わたしを離さないで』があるが、今作はより胸糞な内容となっている。
AFは人間や動物とは同列ではなく、きっぱりと『奴隷』としての扱いだ。感情をもっていてもそれはコミュニケーションで考慮されないし、変態の餌食となる身代わりに犠牲を願われるし、「仕事だけでなく、席まで奪うとはね」と罵られる。
無理解と不慣れからの冷たい視線は今なおリアルに感じられる。
人間とそう変わらないレベルの外観の少年・少女がペットショップのように陳列され、値踏みされ、買われ、奴隷扱いされている状況はうすら寒いものがある。
ヒトにとって明るい未来はきておらず、遺伝子編集による能力向上処置を受けられない子供は大学入学を制限され、有能な技術者もロボットに「置き換え」られている。SF的な要素はAFクララの一人称視点の語りから断片的に読み取れるのみで、その陰鬱な空気を感じ取れるだけ。
カズオ・イシグロは細かい描写から真実を読み取るよう要求する文体なので、そのオブラート包んだ感覚をどう受け取るかは好みによるだろう。
そしてその中を生きるヒトもかなりエゴイストで、どうしようもない奴らが多い。一言多いリックの母親や、欺瞞を重ねて生きるヒステリックなジョジーの母親、主人のジョジーだって親切なように見えてはっきりとクララを奴隷として扱っているわがまま娘。この話の中で、好きになれる人間のキャラクターは少ないだろう。極めつけはオチで、もはや当初に述べたとおり胸糞である。『わたしを離さないで』と違ってセンチメンタルでどうにかなる描写ではない。

メタくそに書いたがこれこそまさに文学作品の味でもあると思う。途中からはページを繰る手が止まらなかった。人は不幸ののぞき見が好きだからね。
#読書
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あおうま
「鼻歌」「小さな幸せ」
望月充希(もちづき・みつき)&櫻庭詠(さくらば・よみ)&祈月清矢(きげつ・せいや)Arcadia Magic Academy Ver.

 俺は夏が好き。冷え性で冬は末端が冷えるから。風属性塔のサロンでそう言ったらルームメイトの充希は反論した。
「えー、清矢くんに似合う季節って冬じゃない。夏男は俺でしょ? 海辺のアバンチュール、階段でかじるオレンジだよ」
「冷たい性格とかそういう俺への間違ったイメージじゃねぇだろうな?」
「うーん、お肌はもち白だし、瞳は紺色に潤んでるし、髪は真っ黒だもん、それに唇は紅玉リンゴ色なんだから、かんじき履いて雪かきしてなさいって」
 なんだそれ、って言い返しながら、持ってたココアを飲み干した。充希が追加してくれたオレンジリキュールのお陰でちょっとした豪華ドリンクになってる。氷のようだった指先はおかげで少しほぐれてる。
「なーなー、それって、清矢くんがかわいいってこと?」
 仕事の多い聖属性塔から避難してきてた詠が人懐こく会話に参加した。充希は長めの茶髪をちょっといじりながらうるさそうにシッシッと手を振った。
「あっひでー! 何厄介払いしてるわけ?」
「清矢『サマ』はさー、可愛いとか言われてうれしーの?」
「嬉しいかって言われると……」
 はっきり『美形』って言ってくれたほうが俺は嬉しい。充希は自分もオレンジ風味のココアを口にしつつ、詠をいじり始める。
「何かなー、自分の恋人が褒められると詠ちゃんは楽しい訳ね。気のいい男前に見えてそういうとこは重たいよね詠ちゃんって」
 そう評してから、ぐさりと返す刀。
「別にいいじゃん、俺がどう思ってても。詠ちゃんは清矢くんの一番のペットだし。詠ちゃんが可愛いって思ってればそれで充分でしょ」
「ペットじゃねー! 俺は清矢くんの親友で、恋人! 充希マジ訂正しろよな」
「バーカ。下らねーことでもめるなよ」
 俺はそう言って詠の短髪をわしわし撫でた。充希は何かわざとっぽく知らん顔してる。もしかしてナンパ失敗したんだろうか。それとも女の子目当てで参加してるサークルで冷たくされたとか?
 俺はそんなふうに思って、充希の肩をするりと抱いた。
「充希も詠もどっちも俺の下僕♡ 可愛いわんちゃんたちだぜー」
「あは、清矢サマ太っ腹♡ 俺も詠ちゃんみたいにクンクン甘えちゃおっかなー?」
「ざ、ざけんなマジ! 清矢くんは俺の!」
 詠が隣からぎゅうっと俺の胴に抱き着いてくる。同年代とベタベタする年は過ぎたって思うけど、俺はどっちも大好きだからばかに嬉しかった。
「充希、何かあったんだろー? 今夜は清矢サマが肌で慰めてやるから安心しな♡」
「キャー、清矢くんの熱で充希燃えちゃう♡ じゃーソフトドリンクなんかじゃなくて今夜はどっか飲みに行かない? もちろん清矢オゴリで♡」
「普段お世話になってるからそれくらい安いよなー、詠♡ 愛にケチケチすんじゃねーよお前ってやつはよ!」
「んーっ、三人でいっぱい仲良くしよ♡ 寄ってきたおねーさんは俺に回してね♡」
 充希はギリギリのネタも冗談めかして合わせてくれた。ほっぺに軽いキスまで追加である。俺はこいつのこんな柔軟さと器用なとこが好きだ。詠はそれ見て悔し気に眉を吊り上げて、涙目になって俺の脇腹に頬ずり。しっぽはきゅんっと高角度に上がってる。ホントわかりやすくて可愛いのな、こいつってば。
 男子三人でおしくらまんじゅう状態になったら、サロンで香炉だの祝符だの用意してたミル・イシュガルド・サルーマはビビってるっぽかった。ま、ローク神殿の巫女さんなんていう究極の箱入りはこれぐらいでも刺激が強いんだろーな♡
「……なー。それなら行く前にみんなで剣術の調練していかね? 身体もあったまるしさー、俺、充希に勝ちたい」
「へー、生意気言いますねぇ? 清矢くんどーする? 審判でもやりますぅ?」
「賄賂期待してる。さー充希くんは俺に何してくれるのかなぁ♪」
「うん、調練所十五周くらいマラソンしてくれればいいなぁっておにーさんは思ってるよ♡」
「もーホントどっちもバッカじゃねーの? ミル見てるじゃん、俺はずかしーよー」
 詠の文句なんか気にせずに俺は席を立って、マグカップの片づけは詠に任せちまった。充希も倣って、貧乏くじひいた詠は怒ってる。リクエスト通りに練習に付き合ってやるんだって圧かけて、笑いながら寮部屋に戻ってく。
 っていうか、やっぱりこういう瞬間がささやかだけど一番幸せかも。
 男子仲間特有の気だるい親密な空気をまとってサロンを後にする。『ウィリアム・テル序曲』なんて鼻歌しつつ、青春も一枚剝けばこんなもんだって、冬なのに寒さを気にせずにいた。(了)

#[創作BL版深夜の60分一本勝負] #ComingOutofMagicianYozora #[創作BL] #充希×清矢 #詠×清矢