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あおうま
江國香織著『号泣する準備はできていた」新潮社 二〇〇三年

短編集なんですが、ほとんど不倫の話です……。
良いと思ったのは「じゃこじゃこのビスケット」「熱帯夜」くらいかな……。
「じゃこじゃこのビスケット」は十七歳のさえない娘がさえない男と海に行ってつまんないデートする話。このパっとしなさがいとおしい。「熱帯夜」はレズカップルの絶頂期になじみのバーで飲んだあとイチャつく話。どっちも不倫じゃない。
あとは不倫願望も入れるとほぼ全部不倫の話。どんなに美々しく書かれてもちょっと乗れない。恋愛の段階なんか語られず、たいてい動物的に惹かれてるだけだから感情移入もむずかしい。
べつに不倫自体は読めないわけじゃないんだよ。ただ短編集の八割九割が不倫ネタっていうのはどうなの?
文章も読みやすいけどなんだかすべてが書割のよう。それがいいのかもしれないが……。
あんまり面白くはありませんでした。
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あおうま
小川一水著『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2」早川書房 二〇二二年

宇宙漁×百合SF ふたたび。前の巻よりも読むのに時間かかったのは、主要人物ふたりの心理やなんかよりは、
もう一方の主人公のふるさとこと弦道氏の惑星「芙蓉」の問題が中心だったからかなぁ。
もう一方の主人公ことダイオード(寛和)は、「芙蓉」にも元カノにも未練も何もないから。
テラとダイオードの成長というのは何もなく、百合の濃度が高まるだけである。
それも描写が細密になるのは最初の一回だけで、あとは超ぼやかし状態だから何てこともなく。
ニシキゴイ漁については面白かったんだけど……
もうちょっと登場人物の内面のドラマが欲しい、と思うけどそれはお門違いっぽい。
最後、弦道氏の社会改革という選択は断って、何もわからない未知の世界・GIに飛び出していくのがわかりやすい。
要するにフェミニズムSFではないということ!
はっきりそう宣言するのが二巻ていう感じ。次以降どうなることかなぁ。
周回者たちの社会は男尊女卑なのに、AMC粘土の発生者や船団長は女性、っていうのも何だかご都合ではあるし。
買ってあるのはここまでなので、三巻はちょっとあとになります。
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あおうま
徐庶蜀ルートセーブデータ作りのためにやさしいで四章から再度プレイしてるけど
里関連が見直すとけっこう発見があるね
漢が里を滅ぼしたのは反逆者の赤子をかくまっただけでなく『太平の要』が…というか白鸞が漢室を見捨ててるからなんだよね
別の英雄を補佐するとまで言っちゃってるんだから
これはやられますわ……紫鸞だけの責任ではないね。
その後も朱和とともに紫鸞を里に残したりと白鸞先生の判断ミスが多すぎる
子供だから仕方がないとはいえ……ちょっとこれは……
あと香草に関してはあれですね月香草は一番最初なんで徐州でもなんでもないけど、どこにでも生えてるのでまぁいいか。
しかし呂布を超えなきゃいけない……硬すぎるし1ミスで死ぬのであまり楽しくない呂布戦

うーん仁王3も発売されるし時間が足りない
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あおうま
シロツメクサの花言葉が「私を思って」「約束」と「復讐」って・・・
ちょっと待ってくれよーーーーーー花言葉は安直だからやらないんだよ・・・
あと時代考証をしなきゃいけなくなるからだよーーー
まぁワイは無双の二次に関しては平気で後代のもの出すけどな!
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あおうま
#[無双Origins]
徐庶蜀軍ルートのセーブデータをとりに四章の途中データからやりなおしてるんだけど…
何この絆2の「夢の始まりまだ少し甘い味です」状態
ジョッショがネガったときに無名くんが優しくうなずいてるのが可愛いすぎる
書庫でこの会話っていうのも陰キャ文系には刺さるものがある
みんなどうせ「耳をすませば」大好きでしょ!?!?
俺は凡人だ…ときちんとジョッショのキャラ立てをしていきます
劉備殿の目指す慈愛に満ちた天下を諦められない…だって……
それは蜀スキーに刺さってしまう諸刃の剣のことば
ワンコみたいに目をきらめかせるな……!
この時点で陣営移りをしていくジョッショの思考、乱世の早期終息という現実と慈愛に満ちた理想郷の夢が対比されていて美しいし悲しいし

劉備軍のキャラたちとの絆会話は暴走気味なのも含めて段階踏んでてよろしく感じますね!
趙雲なんか心のかけら残していくし
ただそれは劉備への思いなんだけど全員無名LOVEになってると怖いので俺によし
あーあー鳳雛先生が活躍するまでやりたかったなぁ。
いきなり蜀後期も後期っていうか終わらせる人たちの話だったからよくなかったんだ
あらゆる意味で辛すぎて

スピッツが似合いすぎてヤバいカップリングでしょう……
しかも「スピカ」が合うって……萌えなどで苦しい
割れ物は手で持って運べばいいでしょう?
幸せは途切れながらも続くのですーーーー
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あおうま
池波正太郎『夜明けの星』文春文庫 一九九八年

父を殺され、仇討ちのため仕官もできなかった足軽の子・堀辰蔵。江戸にたどりついた彼は、飢えのため父の形見の銀煙管を引き取ってもらおうとしたが、叶わず、逆上してその煙管師を殺してしまう。辰蔵はその後、裏社会に拾われ、剣の腕で生きる暗殺者となった。しかし、煙管師にはひとりの娘がいた。彼女の名はお道といい、やがて小間物問屋・若松屋の鬼女将に拾われ、苦難のはてに幸せをつかむ。一方、辰蔵は殺人者に身を落としていたが、彼女の無事だけは唯一の良心で気にかけつづけていた。

という話である。さて、お道と辰蔵の人生はいかに交わるか。そこが見どころのはずだが、辰蔵の仇討ちのほうが気にかかってしまい、延々とそっちを期待していたwwww
筆致は簡素で、わかりやすさ優先である。だからプロット命のはずだが、そういう熱い展開はあんまりないまま最後までいってしまう。これは元は短編だったらしく、圧縮した尺ならば運命の妙や深い人情にしんみりできたはずだが、文庫本一冊という長さなので、もっと違う胸躍る展開を……期待してしまった……あと作中の女に対する男の視線がちょっとなぁ、今読むにはキツイ感じがする。

一瞬、佐吉は何ともいえない眼つきになり、まじまじと女房の顔を見つめたものだから、おさわが、
「あれ、嫌な。何で、そんなに見なさるのさ」
「女という生き物は……」
「もう、およしなさいよ、生き物なんていいなさるのは……」
「いや、お前の、その肚の底にも、亭主のおれが到底わからぬ性根が隠されているとおもうと、何だか空恐ろしくなってきた」
「何をいってなさるんですよ、私の肚の底なんか、何もありゃあしない。からっぽにきまってますよ」
「そりゃ、いまのお前には何もあるまいが、いざとなったときの女という生き……」
「また生きものかえ、親分。いいかげんにしておくんなさいよ」


お道の玉の輿の裏にある女の策略というものを怖がる視線なのだが、江戸時代ということをさしひいても、まぁ当然の蔑視ではあるが、作中での正義漢によるものなので、キツイw
むしろ握りつぶされたいくつもの性暴力だってあったわけで……。
それを闇に葬らなかったのが、作中で皆に嫌われているパワハラお内儀・お徳なのである。彼女はやはり有能だったし、情ももっていて、しかも正義感まであったということか……。そのへんがやっぱり面白いね。あとは江戸の香具師たちの裏社会っていうのも楽しく感じた。剣戟については全然くわしくありませんwww
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あおうま
小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』ハヤカワ文庫JA 2020年

超おもしろかったがちょっと待ってくれ。要約するのがキツイwww
作者のヘキである宇宙世紀ものである。そこに百合トッピング、って感じ。

西暦では八千年代、人類は太陽系をすでに脱出し、二つ目の新星系に移行していた。かれらは周回者を自称し、資源不足にあえぎつつも彼らにとっては最古ともいえる人類の精神的慣習を維持していた。つまり、家父長制と男尊女卑。資源については、昏魚とよばれる大気圏中を遊泳する魚を獲ることでなんとか母艦との交易を成立させている状況である。そんな限られた世界に生きる独身女性テラは、自身の漁猟と生活のパートナーとなる男性を探していたが、彼女の並外れた漁網成型能力についていける男はおらず、焦る日々を過ごしていた。二年に一度の『大会議』、民にとっては氏族同士の交流の機会であり、お見合いのとき。しかし今回も結果ははかばかしくなかった。その『大会議』が終わり、すべての氏族舟がふたたび分離する夜。テラは女ながら艦の操縦士としての腕をもつ別氏族の少女、ダイオードに出会うのだった。

そんな設定がいろいろくっついているけど、百合ップルの成立がもどかしくて可愛くて悶える。
私的感情をもたないに近い男主人公だった『時砂の王』よりはるかに面白い。
ラストの口喧嘩の果ての「ごほうびあげます」が萌えすぎて……あのー……まぁ分かってたんですけど。あと、人間の精神に観応してどんな形にもなる粘土っていう設定が夢ありすぎる。「ふねのかたちを、おもいのままに」。そのままで行けば設定の積み重ねが大きすぎておいてきぼりになるのに、主人公たちは人類の古い慣習に苦しめられているので、共感などもある。

そんなこんなで二巻に続きます。わはー。
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あおうま
江國香織『間宮兄弟』小学館 2004年

けっして器用なタイプではない間宮明信と徹信の兄弟は、父親が亡くなって以来、ふたり暮らしをしている。仲睦まじいふたりの生活は穏やかで日々のささいな幸せに満ちている。そんな二人が求めているのは女性との付き合い。レンタルビデオ屋の大学生や、職場である小学校の美人教諭。平和な日々を抜け出し、恋を求める彼らに、成就はおとずれるのか。

あきらかにホモソーシャルの話なので、恋愛は成就しない。日々のディテールが積み上げられ、その中でけっして扇情的ではない兄弟の姿がありありと浮かび上がる。面白いのは、登場する女性がまったく兄弟を恋愛対象とみなさないことである。彼女たちにとっては結局男というのは恋愛幻想を満足させるにふさわしい性的魅力をもつ生き物でしかないから。だから誰とも結ばれなくてよかったのである。彼女たちの男は表層的で、別に本当に何でもないんだけど。でも兄弟には性的魅力がまったくないししょうがないね、って感じの作者の態度でもある。女性に対するアプローチも弱男が馬鹿にされがちな一方的でキモイ定型だし。
ネットの弱男叩きって、たしかに暴力性まで帯びるから厄介とは思うんだけど、なんかどうなんだろうね? 弱女叩きをおなじ筆致でやったら超炎上する気がする。っていう風に思った。
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あおうま
ディヴィッド・アンブローズ『リックの量子世界』創元SF文庫 2010年

パラレルワールドもの。小規模の出版社を経営するリックは、ある重要な契約の日に妻を交通事故で失う。それを機に、彼は「もう一つの世界」に移転してしまう。狂人として精神病院に収容されてしまうリチャード。彼は元の世界に戻り、妻を救えるのか?

量子理論ものでSF出版社から出ているが、理論的な野心というのはないただのパラレルワールドもの。これは、ジャンル出来立てならオーソドックスなよい話なのだろうが、異世界転生花盛りの今からすると、パラレルワールドやタイムトラベルまでして、やることが妻の浮気の糾弾とか、妻と息子が生きてるだけの世界の構築とか、そんな卑近なものなのかよ……とちょっと思ってしまう。
筆致は読みやすいが、主人公も知的を気取ってかなり感情的だし、量子理論も利用されるだけで、とくに大きな見解が示されるわけではない。そういう人間は狂人として扱われ、精神治療の対象として疎外されるが、双方の分野にまったく歩み寄りはないし、ごく堅実で地に足の着いた展開だけなので、ちょっと面白くはなかった。

「きみたち科学者が決して思いつかないことが、ひとつあるのを知っているかい?」わたしは次第に興奮しはじめていた。自分の声がやけにしつこく、まるで噛みつくようなトーンに跳ね上がったのがわかった。「きみたちは、光速で旅ができるとか、同時にふたつの実体を機能させることができるとか、いつもそういう夢のマシンを想像で作り上げているが、そのくせ、そういうマシンの中でも最高に優れたものの存在は見すごしてばかりいるんだ――それは、すでにわれわれがフル活用しているものなのに!」
 彼はわたしがなにを言おうとしているのか理解できぬまま、興味をそそられた目でこちらを見つめた。
「そのマシンは、人の心さ!」と、わたしは言った。